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地方鉄道活性化に「旅ラン」のご提案杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/4 ページ)

地方鉄道にとって、観光誘客は重要だ。最近の流行は内装にこだわり、食事を提供する観光列車だ。鉄道ファン向けの運転体験イベントなどもある。もっと欲張って、異分野からの誘客を考えてみたい。今回はマラソンの世界を学び、地方鉄道との親和性を探った。

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杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


 学生時代からの友人K氏の趣味はマラソンだ。全国各地の市民マラソン大会に出場している。そういえば、つい最近「マイルが貯まったから日帰りで福岡へ、『海の中道海浜公園リレーマラソン』に参加した」というSNSエントリーもあった。大会に出ない週末は、東京近郊で温泉&ランを楽しみつつ、身体を鍛えているそうだ。

 その日、K氏は東京ベイエリアの人工島を巡った。自分で16キロのコースを設定したという。倉庫と工場ばかりだけど、休日はトラックの往来が少なく、沿岸には公園が整備されている。羽田空港を発着する飛行機も間近に見られて退屈しない。予想した通りの良いコースだったそうだ。「これから風呂に入って休憩」とSNSに投稿されており、そこが私の仕事場から徒歩5分。運動が苦手な私は休憩だけ付き合った。

 「この温泉施設は、荷物を預かってくれないんだ」

 K氏は少し不満げだ。ランの後は温泉に入るから、鞄に着替えなどを入れて訪れる。その鞄は走行中は邪魔だ。預けたい。しかし、この温泉施設は荷物預かりサービスがない。コインロッカーもない。……いや、それは当然だ。温泉施設に来たお客さんは、施設内の設備を楽しんで帰る。途中退出、再入場は想定していない。

 「でもね、ボクみたいに趣味で走る人は多い。そういう人向けに、荷物預かりとか、再入場のサービスを始めたら、売り上げに貢献すると思う」

 「なるほどね。博物館でやっているように、腕にスタンプを押す仕組みでいいね。帰るときは風呂で流しちゃうわけだし」

 K氏は大手広告会社でいくつものプロジェクトを経験している。良いアイデアだと思う。しかし「人工島のランニングの拠点として」という売り方は難しい。人工島の企業にとっては道路も仕事場。この地域は近年、ロードバイクの走行マナーも問題になっているくらいだ。ドライバーたちはランナーたちを歓迎するだろうか。

 それはともかく「既存の施設にランナーを呼び込めば集客につながる」は興味深い。ランニング趣味の世界を詳しく聞いてみたら、都市部の温泉施設だけではなく、地方鉄道の誘客につながりそうだった。

ランナーの皆さん、こんな道を走ってみませんか
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