シニアの不安は「お金」だけなのか 与えられた「10万時間」という恐怖:お金もセンス(2/5 ページ)
超高齢化社会を迎える中で、「多くのシニアはお金を使わない」と言われている。「医療費などを考えると、貯蓄を崩すことはできない」といった声をよく耳にするが、問題は本当に「お金」だけなのか。
「お金」の話をする前に「時間」の話
「お金」の話をする前に、「時間」の話をしよう。
「10万時間」――。皆さんはこの数字を聞いて何を想像されるだろうか? これは定年退職後に与えられる「時間」と言われている。60歳で定年退職した人が85歳でお亡くなりになった場合の日中余暇時間の総計だそうで、つまり定年退職後に与えられる新たな「自由時間」である。
趣味や娯楽、奥さまやお子さんと一緒に過ごす時間、いろいろな使い道はあるだろうが、それまでアクセク働いてこられた人にとっては、定年退職後の楽しみな「時間」であることは間違いない。だが、「10万時間? う〜ん、この数字にはちょっとピンとこないなあ」という人も多いのではないだろうか。
一般的にサラリーマンの場合、大学卒業後、22歳で就職して60歳で定年退職したとすると、生涯労働総時間、つまり一生のうちに働くすべての時間のトータルは、1日9時間とすると、9時間(日)×250日(年)×38年(年数)+α(残業時間など)で、約10万時間になる。お分かりだろうか? あなたが新入社員で入社したその日から、定年退職を迎えるまで働き続けたその時間の合計が約10万時間で、それとほぼ同じ時間が60歳の定年後にドーンと与えられるのである。
正直、私はこれを最初聞いたときゾッとした。最初のうちはいいだろう。働いている時はできなかった習い事や映画鑑賞など十分にできるし、英語や料理など新たなチャレンジを始めるもよし。しかし、10万時間である。やりたいことはすぐに一巡するだろう。その後、毎日毎日、どのように時間をつぶしていけばいいのか? そう考えると、以前、病院がシニアのサロン化していたり、ゲームセンターや公共の図書館にシニアが大挙していることも大いに頷(うなず)ける。
何もしないとボケそうだし、何かやるとお金がかかる。「暇な時間を、お金をかけずにどう使うか」――実は、これが多くのシニアにとって大きなテーマなのである。ボケたり体調を崩すと医療費や介護費がかさむので、国もいろいろな施策を考えているようだが、ユニークな試みとして1円パチンコ普及活動がある。
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