シニアの不安は「お金」だけなのか 与えられた「10万時間」という恐怖:お金もセンス(1/5 ページ)
超高齢化社会を迎える中で、「多くのシニアはお金を使わない」と言われている。「医療費などを考えると、貯蓄を崩すことはできない」といった声をよく耳にするが、問題は本当に「お金」だけなのか。
著者プロフィール:
森永賢治(もりなが・けんじ)
1992年、ADKに入社。通信、食品、化粧品、ファッション関連商品のマーケティング・ディレクターを経て、1999年、「金融プロジェクト」リーダーに就任。現在、ストラテジック・プランニング本部長(金融カテゴリーチーム・リーダー兼務)。JMAマーケティングマイスター。
2014年10月に書籍『「お金と心理」の正体』(共著)を刊行。同書籍では、上記金融カテゴリーチームに蓄積された金融コミュニケーションのノウハウ・分析を8つの章に分けて紹介している。
2020年は、オリンピック開催の年であるが、実はこの年、2つの大きな節目を迎える。1つは、とりあえずまだ増加傾向にある東京都の人口が、この年をもってついに減少に転じるのである。そしてもう1つ。65歳以上の人口比率が、2020年についに全体の3割を超える。さらに3年後からボリュームゾーンである団塊世代も後期高齢者へと突入する。つまり、日本の高齢化社会が本格的に始まるのである。
ちなみに60歳以上が保有する金融資産はなんと1000兆円で、これは日本全体の約65%にあたる。これらのことを考えると、日本における貯蓄と運用と消費の主役は「シニア」であることは明白だ。もちろん、すべての金融機関はシニアをターゲットとし、日々積極的なアプローチを仕掛けている。いや、金融機関だけではない。メーカー、流通、サービス産業、すべての業種がシニアに狙いを定めてあらゆる商品&サービスを展開している。
しかし、昨今よく耳にするのが、シニアに対し「お金を使わない」という声である。消費だけでなく、投資運用に対しても慎重で、結局は現金(日本円)で手堅く貯蓄というのが大多数というのが現状である。後で詳しく述べるが、その原因の根幹にあるものが、いわゆる「漠然とした不安」である。
逆に、最近、シニアとお金関連でよく話題になるのが「オレオレ詐欺」をはじめとする特殊詐欺のニュースで、2014年の被害者単価がなんと412万円。「やっぱり高齢者はお金を持ってるんだなあ」と不謹慎ながら感じてしまう。
特殊詐欺はここ最近増加傾向にあって、警察庁によると2014年は認知件数・被害額ともに前年を大幅に上回った。被害額は559億4000万円と初めて500億円を超え、過去最高を更新した。被害額の急増が気になるが、ここで不思議に感じるのは、老後不安の中で「異常なほど慎重」と、オレオレ詐欺の急増に見られる、「驚くほど不用心」の2つの側面が存在している事実である。これは、シニアに2つのタイプがいるということではなく、同じ人の中に、2つのマインドが存在しているということだろう。
ということで、今回はシニアについて現状とインサイトを分析しつつ、シニアならではの「お金のセンス」を考えてみたいと思う。
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