低迷する烏龍茶市場に輝きを再び 日本コカ・コーラの挑戦:商品開発に約5年(2/3 ページ)
サントリー食品の独走状態だった烏龍茶市場に待ったをかける日本コカ・コーラ。これまでの“常識”にとらわれない新商品でシェア拡大を図る。
味わいにこだわる理由
このようにダウントレンドの烏龍茶市場だが、あえて日本コカ・コーラは同市場に挑む。なぜか。
「縮小しているとはいえ、無糖茶の中ではまだ2番目に大きな市場だ。加えて、新しい価値観をもたらすことで再び市場が活性化する可能性はある」と福江氏は狙いを語る。
炭酸市場が好例だ。マイナス成長していた時期にいわゆる“ゼロ戦争”が勃発。各社がカロリーゼロなどを売りにする炭酸飲料を相次いで発売したことで市場が活性化し、その後の生産量拡大につながった。
今回、日本コカ・コーラが約5年の開発期間をかけて発売した新商品が「日本の烏龍茶 つむぎ」である。
特徴は国産茶葉を100%使用して、味わいに強くこだわったことだ。同社が行ったアンケート調査などによると、烏龍茶自体の最大の不満点は、飲むとイガイガが喉に残るという後味の悪さだった。「つむぎでは、飲んだ後にすっきりとする味わいを意識した」と福江氏は説明する。
成功モデルとして参考にしたのが綾鷹だ。京都の老舗茶屋である上林春松本店とタッグを組み、「急須でいれたような緑茶の味わい」を突き詰めた結果、多くの消費者の支持を得た。福江氏は「同じように烏龍茶でも味わいを追求すれば、後発であっても成功する可能性はあるのでは」と考えた。
理想の味わいを実現する手段として選んだのが日本での原料生産だ。国産茶葉を100%使用するとともに、茶葉の栽培から焙煎まですべて人任せではなく、細部まで同社のスタッフが入り込む必要があったという。
開発段階で苦労したのは、茶葉の発酵だという。実は緑茶と烏龍茶、紅茶はチャノキという同一の木の葉を原料としており、発酵度合いで種類が分かれているのだ。不発酵が緑茶、完全発酵が紅茶で、烏龍茶は中間発酵したものだが、この中間発酵の技術が非常に高度なのだという。「ほとんど知見がない中で、茶葉の職人などパートナーと協力し、学びながら商品開発した。結果的に150種類ほどのプロトタイプを作った」と福江氏は話す。
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