低迷する烏龍茶市場に輝きを再び 日本コカ・コーラの挑戦:商品開発に約5年(1/3 ページ)
サントリー食品の独走状態だった烏龍茶市場に待ったをかける日本コカ・コーラ。これまでの“常識”にとらわれない新商品でシェア拡大を図る。
「過去にも数々の烏龍茶を出してきたが、二番煎じだったのは否めなかった」――。
日本コカ・コーラ マーケティング本部 ティーカテゴリーの福江晋二バイスプレジデントはこう振り返る。
烏龍茶と言えば、中国産茶葉が“常識”。1981年からサントリー食品インターナショナルが販売する日本での市場シェアトップ商品「サントリーウーロン茶」をはじめ、各社とも原料に使用するのは中国から輸入してきた茶葉だった。加えて、味も消費者が想起するのはあの独特の渋味なので、飲料メーカーもそれを大前提に商品開発してきた。
ところが、こうした横並びの状況が、結果的に烏龍茶市場全体の低迷を招いたのだという。
調査会社の富士経済グループによると、緑茶や烏龍茶などの無糖茶飲料市場は2014年度で7735億円(前年比0.8%増)と右肩上がり。しかし、その中で成長著しい緑茶市場とは対照的に、烏龍茶市場は2000年ごろをピークに年率で約5%も縮小し続けている。かつては無糖茶飲料市場をリードした烏龍茶だが、現在は緑茶のシェアが無糖茶飲料全体の半数以上を占め、烏龍茶は2番手と言えどもシェアは2割未満という状態である。
また、烏龍茶市場単体を見ると、サントリー食品インターナショナルの独占状態。日本コカ・コーラや伊藤園など各社とも烏龍茶の新商品を投入しているものの、サントリーウーロン茶と競い合うような商品は長年にわたって生まれなかった。
「例えば、現在の緑茶市場だと複数の大きなブランドがあり、各社がしのぎを削っている。烏龍茶では我々も強いブランドを打ち立てることができなかったので、結果的に競争が起きにくい市場になってしまっていた」(福江氏)
市場低迷のもう1つの原因は、まさに緑茶の台頭である。かつて緑茶は自宅で淹れて飲むのが当たり前だったため、わざわざお金を出してペットボトルや缶の緑茶を買うような消費者は少なかった。その一方で、烏龍茶は自宅では味わえない、中国から来た特別な茶というイメージで売り上げを伸ばしていた。
ところが、日本茶ブームなどの影響で一気に緑茶市場が拡大したことに加え、メーカー各社とも改良を重ねて品質や味を追求するなど、商品開発にいっそうの力を注いだ。これらが無糖茶飲料に対する消費者の選択肢を広げただけでなく、好んで緑茶を選ぶような状況を作り出したと言えるだろう。実際、日本コカ・コーラの緑茶商品「綾鷹」は約70カ月連続で売り上げを伸ばしているという。
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