自治体首長選挙公約に変化あり! 「鉄道存廃」から「活性化」へ:杉山淳一の時事日想(2/4 ページ)
衆議院解散と総選挙が決まり国政がざわつき始めた。それよりひと足早く、11月16日に各地で自治体首長選挙が行われた。このうち5つの選挙の当選者が鉄道の活性化を公約に掲げている。自治体にとって鉄道の価値が高まっているかもしれない。
愛媛県知事選挙――四国新幹線と松山駅接続改善へ
愛媛県知事選挙は現職の中村時広氏が新人を抑えて当選した。愛媛県には四国電力の伊方原子力発電所があり、現在は休止中。現職は再開を前提とした安全対策を公約に掲げ、新人候補は廃炉を訴えた。現職は54歳、新人は71歳。県民は原発問題よりも実績のある若いリーダーを選んだようだ。
中村時広氏の公約の4番目に、四国における鉄道の抜本的高速化、四国4県と連携した四国新幹線の整備促進がある。愛媛県はJR四国の予讃本線があり、東西交通の基軸になっている。本四架橋を通じて岡山からの直通特急もあり、鉄道貨物も本州から直通する。
愛媛県というより、四国全県からの期待として、在来線のさらなる高速化、フリーゲージトレインの導入による大阪方面からの直通列車などが引き続き検討されるだろう。四国新幹線については、「四国の鉄道高速化検討準備会」が2014年4月に「岡山〜高知」「松山〜高松〜徳島」の十字型の路線構想を発表した。事業費は1兆5700億円で採算は取れる。四国における経済波及効果は年間169億円という。大阪〜松山間は1時間半で結ばれるとのことだ。
国の支援を得るには、現在の整備新幹線計画の終了を待つ必要があるだろう。しかし、本当に採算が取れるなら、独自の資本調達で建設できるかもしれない。
中村氏の鉄道に関する公約はもう1つ。「JR松山駅再開発事業」である。予讃線松山駅の高架化と貨物駅移転に関連した整備で、駅東西の連絡道路に合わせて、伊予鉄道路面電車の新線「大手町線」を建設するという。
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