日本の隠れたエコ企業を発掘せよ!――「エコトワザ」大塚玲奈社長(前編):嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(3/3 ページ)
「私はバナナです」――そう笑う大塚玲奈さんは、「エコトワザ」を起業した28歳の女性社長だ。一風変わった社名は、“バナナ”な彼女だからこそできるビジネスを表している。日本の伝統をエコロジーに生かすという、エコトワザのビジネスモデルとは……?
灯台下暗し――宝の山の日本の「匠の技」
ここからは具体的に大塚さんが海外に紹介している“匠の技”がどんなものなのかを見ていこう。エコトワザのカタログ「エコトワザタイムズ」。第3号(2008年9月号)では、次のような企業・商品が紹介されている。
企業名 | 商品内容 |
---|---|
純木家具 西岡 | 国産木材を用い、伝統の匠の技で職人が家具を手作りし、販売。子孫にまで継承され得る家具。大量生産・大量消費への挑戦。 |
むつごろう薬局 | 薬剤師による十分なヒアリングを通じて、日本伝統の和漢方薬を顧客に提供。 |
日本イオン | 塩素殺菌と異なり、環境・人体への負荷のかからない銀イオンによる殺菌システムの製造・提供。(例)温泉地に提供し日本伝統の温泉文化を保護。 |
フロンティア・ジャパン | 有毒な揮発性有機化合物を含まない壁紙の製造・販売。(例)シックハウス症候群予防。 |
山陽製紙 | 消臭・除湿の「梅炭クレープ紙」を製造・販売。紀州名産「南高梅」の種(廃棄物)を炭化させ、パルプ・炭・水だけで製造した100%リサイクル紙。 |
和田研究所 | 環境に負荷をかけることなく発泡スチロールをリサイクルできる「スチレン専用溶液」を製造・販売。 |
ADditional | 廃棄される広告用の幟(のぼり)を活用した、一点物のエコバッグの制作・販売。 |
インナチュラル | 廃棄羊毛による化学処理を施さないホームウェア「YUUYOO」を製造・販売。 |
恭プロ | 石垣島の水中撮影のプロ集団。環境への負荷の少ないシステム・プロセスを実現。 |
以上の9案件である。いずれも日常生活に密着し、環境や人体への負荷をかけない商品だ。1つ1つは小さな一歩でも、それが集まることで大きなうねりとなって世の中を変える力になり得るものと評せるだろうか。
環境問題に対応する、技術や商品を持つこうした企業は、実は日本各地に多数存在している。しかし中小零細で、派手な宣伝もせず地道に経営している企業が多いせいか、我々はなかなかその価値を的確に把握できない。そのため欧米の企業から、「えーっ、日本にはそんなすごい会社があったのか!?」と言われて初めてその価値を知ることも多いのだ。
「実は今回のロンドン出張でもそうだったんですよ」と大塚さんは語る。日本の匠の技は、世界の市場から見たら宝の山なのである。
今こそ発掘しよう、日本の隠れたエコ企業を
大塚さんのビジネスの今後の挑戦課題をあえて挙げるとすれば、次のようになるだろうか?
地球温暖化をはじめとする環境問題は待ったなしで進行している。となれば、残された少ない時間の中で、環境問題の予防に向けて本質的かつ効果的な活動をしている企業の情報をより速くより広範に収集し、その技術や商品を迅速に世界に普及させることが必要であろう。
現在は大塚さんが海外や国内を1人で飛び回り、社内的な実務はパートナーの小勝直美さんがテキパキと処理しているが、課題を実現するためにはさらに踏み込んだ体制作りが緊要だろう。
今すぐにできる方策――それは本稿を読まれた日本全国の人々が、身の回りに見出される「これは!」と思えるエコ企業やエコ商品の情報をエコトワザに寄せることである。あるいは地域として、企業グループとして、大塚さんのビジネスに関心を持たれ、詳細を知りたい場合も、同社にご連絡いただければと思う。「私が直接うかがって、各地で説明会を開催させていただければ」(大塚さん)。
「ええ〜? そんなこと言われても……」などと躊躇(ちゅうちょ)することはない。われわれ日本人の目には、地方のごくありふれた中小零細企業に見えても、世界から見れば「地球や人類の救世主」となるかもしれないのだから。(後編に続く)
嶋田淑之(しまだ ひでゆき)
1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」、「43の図表でわかる戦略経営」、「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。
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