「光熱費削減はお任せあれ」――人工知能で施設を省エネ化(3/3 ページ)
光熱費の高騰で頭を悩ます企業が施設を省エネ化するための手助けをするベンチャー企業、ウッドノート。自社製の人工知能を用いた細かなデータ分析や徹底した現場調査から、施設の無駄を見抜き、改善策を提示していくのだ。
ハウステンボスの光熱費を1億7000万円削減
規模の大きな施設の場合、省エネ対策の効果も劇的だ。
長崎県・ハウステンボスの事例を挙げよう。広大な敷地に都市機能が整備されたハウステンボスは、かつて多大な光熱水コストがかかっていた。そこで省エネ化を図るために2004年、産学連携による「省エネ委員会」を設立。ウッドノートもエネルギー効率を分析し、省エネ対策を提案する外部機関として参加した。
1年間かけてエネルギー消費状況をモニタリング、その一方で来場客動向などとの相関分析も行い、定性的・定量的な省エネ対策を構築した。そして、運用面での無駄なエネルギー消費を省いた結果、光熱水コストが年間1億7000万円減少(対策前比17%減)した。入場者数が増加したにもかかわらず、光熱水コストは削減できたため、経営効率の改善にも寄与したのだった。
良かれと思って導入したものの……
こうした無駄は、実はありとあらゆる建物で生じている。とはいえ、わざわざ非効率なシステムを選ぶ経営者などいない。時には良かれと思って取り入れたシステムがネックとなり、不要なコストを生み出している場合もある。
例えば、注意したいものの1つに、設備の管理をする「中央監視システム」というものがある。これは空調設備にセンサーを付け、自動的にコントロールするシステムだ。とはいえ、“自動制御”という触れ込みであっても、どれくらい効率的にコントロールできるかは値段によってまちまちだという。それなのに建物を作る時、予算を削るためにグレードダウンさせてしまいがちなものの1つとなってしまうという。
能力の高いシステムであれば、こまめなON/OFF制御や活動状況管理をしているため、光熱費は抑えられる。しかし、多くはそこまでの機能を備えておらず、何らかの異常が出たら知らせるといった程度のシステムしか採用していない。また、データが蓄積されているように見えても、特に意味のないデータを取っているなど無駄なことも多い。
しかし、導入する時には数千万円の費用がかかっている分、簡単には見直せない。さらに、同じ会社のグレードの高いシステムにしようとすれば、お値段が1桁上がりかねないのだ。
だが、ウッドノートが導入しているインターネット経由で自動制御する監視システムは、前述のシステムより安い上に、光熱費も格段に下げることができる。一度入れてしまったシステムを見直すことは大変ではあるが、数年後には十分元が取れることも少なくないのだ。
また、数年前に話題になったコージェネレーション(内燃機関・外燃機関などの排熱を利用した熱併給発電)。話題になった当時は、電力会社から電気を買うか自分で発電するかという選択肢があり、発電するための燃料の方が安かったため流行した。しかし現在は、電気やガスの価格が変動したことによって、必ずしもペイするとはいえないシステムになっている。人間、成功体験があることほどやめにくいもの。しかし、こうしたシステムも「どうしたら最大の効果が得られるのか」と検証して、見直すことが必要なのだ。
「高層ビルの屋上から東京の街を見下ろすと、ビルの一本一本が木となり、街はまるで森のように見えるんです。木が調和して良い森になる――それがウッドノートという社名の由来です」と水谷氏は教えてくれた。
病んだ木も、老いた木もある。その木をひとつひとつ治療していく医者がいる。だがその前に、われわれは木が病んでいること、老いていることに気付けているだろうか。まずはそこから始めなければならないのかもしれない。
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