訪日客が増えれば「儲かる」のに、なぜ日本はチカラを入れてこなかったのか水曜インタビュー劇場(観光公演)(3/7 ページ)

» 2015年07月22日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

クルマはまだまだ日本の“武器”!?

「日本経済の武器はクルマ」と思っている人は多い!? (写真はイメージです)

土肥: クルマはまだまだ“武器”だぞ、と思っている人が多いのかもしれません。

アトキンソン: 確かに。でも、将来はそんなことも言っていられなくなるでしょう。2060年になると、日本の人口は8600万人ほどになると言われています。そのうちの約4割が高齢者なので、いわゆる現役世代は江戸後期と同じくらいの数になるんですよね。

 ここで何が問題になってくるかというと、自動車産業は莫大な研究費が必要なのに、その資金が不足するということ。国が大きくて、人口がたくさんいるので、たくさんの人が買ってくれる。規模の経済ですね。その利益の一部が研究予算になるので、クルマ大国というのは人口大国でもあるんですよ。

 現在のクルマ大国は、米国、日本、ドイツ。米国の人口は減らないと言われているので、問題ないでしょう。ドイツの人口は減少する見込みですが、EU全体を相手にしていますので、急激な落ち込みは考えにくい。しかし、日本の現役世代は江戸後期並みに落ち込むので、クルマが売れなくなる。もちろんそうならなために、各社は海外での売り上げアップを目指して取り組んでいますが、米国やドイツと比べて明らかに不利な立場に置かれています。

 消費者が減ると、私の本も売れなくなる(笑)。

土肥: それは大変ですね(笑)。人口が減少することで市場が小さくなると指摘されていますが、労働力についてはロボットが補ってくれる部分もあるはず。

アトキンソン: でも、ロボットは私の本を読んでくれません(涙)。

土肥: ははは。

アトキンソン: スイスは技術力がある国と言われていますが、世界を驚かせるようなクルマを開発していますか? していませんよね。なぜか? それは人口が少ないから。マーケットが大きくないので、それほど売れない。そうなれば、先ほど申し上げたとおり、研究開発ができないんですよね。

 日本の人口は減少します。いくら技術力がスゴいといっても、それだけでいまの経済力を維持できるとは考えられません。そのためにも、いまのうちから観光業をなんとかしなければいけないんですよ。

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