なぜトヨタは「女性役員の個人的な違法行為」で謝罪会見を行ったのかスピン経済の歩き方(2/4 ページ)

» 2015年07月14日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

豊田章男社長が強く望んだ

 じゃあ、どうすればよかったか。一般論としては、逮捕段階では世間を騒がしたことへの謝罪と捜査の行方を見守るというステートメントをWebサイトなどにあげる。そして、容疑がかたまって起訴をされた段階で、はじめて謝罪会見を行えばいい。不起訴ならば会見を開かなくて済むというわけだ。

 このようなプロからの指摘は、非常にうなずける。というよりも、自分としてもさまざまな企業広報から「もし役員が逮捕されたらどうしましょう」なんて相談を受けることがあるが、そこではだいたい似たような回答をしている。

 そこでひとつの疑問が浮かぶ。なぜ一般的には「アウト」な危機管理対応をしたのか。トヨタほどの世界的大企業ならば、社内外に危機管理の専門家がいるはずだ。その進言が届かないというのなら答えはひとつしかない。

 豊田章男社長が強く望んだのである。

 もちろん、トヨタ内部で何があったのかなどまったく知らないので、あくまで想像に過ぎないのだが、豊田社長の「頭の下げ方」を見れば、そう思えるふしが多々ある。

 会見で社長は右手でマイクをぎゅっと握りしめて深く頭を垂れたが、これはプロが唱える「謝罪の作法」としてはあまりよろしくない。正式の謝罪はマイクは机などに置き、両腕はピンとのばして45度くらいの角度でおじきをする。不祥事企業の経営陣が横にズラリと並んできれいに頭を垂れているが、あれは先ほどのような危機管理のプロたちがそのように教えているのだ。

 もちろん、そのようにレクチャーを受けたが、本番であがってしまって忘れたということもある。いずれにせよあの姿を見て強く感じたのは、「とにかく自分の口で今回のことを謝りたいんだなあ」ということだ。

元常務役員ジュリー・ハンプ氏への検察庁の処分に関するステートメント(出典:トヨタ自動車)

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