危機管理のルールからするとありえないが、ユーザーに受け入れられたのは青木会長の真摯で率直な言葉があったことが大きい。
《過ちを犯した時にどういう態度を取るかが大きな問題やないですか。他の人が見たら、「なんや格好付けて」と思われるかもしれない。何を思われても、今までやってきたことを、そのままやる。それだけなんです》
この「態度」というのは非常に大切で、時にセオリーにとらわれるあまりこれを見落としがちになってしまうことが多い。分かりやすいのが、マクドナルドだ。
「ケガ人や健康被害などがでていない単純な異物混入ごときで社長がのこのこ出ていく必要はない」という外食企業の危機管理の「常識」にとらわれるあまり、謝罪のタイミングを逸してしまった。つまり、あの世論のなかでとるべき「態度」を見失ってしまったのだ。
セオリーは確かに大切だが、絶対ではない。特に世間の注目が集まるビックネームの場合、血の通わぬマニュアル的な態度では、かえって反感を買う危険もあるのだ。
謝らなければ「誠意がない」と叩かれるし、すぐさま謝れば今度は「危機管理がなっていない」と茶々を入れられる。どちらが正しかったというのは、その時の「空気」にも左右されるので、ぶっちゃけフタを開けてみないと分からない。
経営者というのは本当に大変な仕事である。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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