クロネコヤマトがマレーシアで快進撃の理由東南アジア発、気になるニッポン企業(2/4 ページ)

» 2015年07月07日 08時00分 公開
[野本響子ITmedia]

ドライバーの地位をあげる

 日本と文化や慣習が違うマレーシア人にどのように動いてもらうか。当初、同業他社からは「うまくいくはずがない」という目で見られていたが、ドライバーの地位をあげることで解決を図った。

 まず給与を同業他社に比べて高く設定した。人事制度を改革し、がんばった社員には幹部への昇進の道を用意する。雇用の際に時間をかけ、体験入社してもらった上で、本当に働きたいかどうかを確認してから採用。新人セールスドライバーの教育には2カ月の時間を要し、丁寧に仕事を教えた。手間のかかる代金引換サービスには、別途インセンティブも用意した。

 オペレーションにもローカライズを重ねてきた。例えば、スタート当初、荷物の紛失など、配達に関するトラブルがひんぱんに起きた。そこで、配達時に情報入力の工程を増やし、誰が荷物の責任者なのかを日本よりもはっきりさせた。

 「以前は遅刻や欠席のあった社員もいまはよく時間を守ってくれます。日本より優れているくらい。代金引換サービスの場合、セールスドライバーは現金を扱いますが、これまでお金が紛失する問題は起こっていません」と山内社長は胸を張る。

 セールスドライバーは暑い中、日本と同じ制服を着用し、同様のスタイルの伝票を使い、時間帯お届けサービスやクール宅急便、代金引換サービスにも応じる。安全運転のための心がけや、あいさつなど、スタッフの教育も日本と変わらない。

クアラルンプールの郊外に位置するマレーシアヤマトの本社。物流を考えて拠点を選んだ。スタッフの多くが宅急便事業に従事する

 「正直、スタート時には、東南アジアで人材を定着させるのは厳しいかなと思っていました。しかし、これが思いの外定着しています。定着した理由のひとつに、働く喜びを感じたからではないでしょうか。身だしなみを整えて日本風の接客をすると、お客さんがびっくりして、『ありがとう』と言ってくれる。そこに喜びを感じてくれる社員もいます」(山内社長)

クロネコヤマトのトラックも日本と同様。制服も、伝票も何もかもが同じだ

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