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» 2015年07月04日 09時00分 UPDATE

宇宙ビジネスの新潮流:宇宙と自動車、加速する2つの業界のコラボとは? (1/2)

Audiとドイツの宇宙ベンチャー、日産とNASAなど、自動車業界と宇宙業界の連携がこのところ急ピッチに進んでいる。その背景にあるのは――。

[石田真康(A.T. カーニー),ITmedia]

 2015年6月末に自動車メーカーの独Audiが、同国の民間月面探査チームに対する技術支援を発表した。今年1月には日産とNASA(米国航空宇宙局)も技術提携を発表している。宇宙と自動車という、一見すると遠くかけ離れた2つの業界で、今さまざまなコラボレーションが起きているのだ。

GPSとカーナビゲーション

 宇宙と自動車のコラボレーションで、読者にとって最も身近なのはGPS(Global Positioning System)を活用したカーナビゲーションだろう。GPSは米国で運用される衛星測位システムの呼称で、地球の周回軌道を回る24機以上の衛星から発信される情報を基に、現在地の緯度・経度を計算するシステムだ。カーナビはGPSに加えて、加速度センサやジャイロセンサも活用して自己位置特定を行い、ルート案内している。

 さらに日本では、2010年から準天頂衛星と呼ばれる独自システムの構築を政府が進めている。現在までに初号機が打ち上げられており、今後は4機体制(最終的には7機体制)にしていく予定だ。ビルや山間部などGPSが届きにくいエリアでも、正確な位置情報を受信できるようになり、サブメートルやセンチメートル級の位置情報の取得も可能になると言われている。将来的な自動運転への活用可能性も言及されている。

自動車の車両制御にも

 衛星からの位置情報は、自動車の車両制御にも活用されている。日本を代表するスポーツカーである日産の「GT-R(R35型)」は、カーナビゲーションと連動した日本初のスピードリミッター解除機能を持っており、国内サーキットの特定エリアに入り、ドライバーが特定の操作を行うと最高速度を180km/h以上まで出すことができるプログラムが組まれている。

 また、世界を代表する高級車を提供する英Rolls-Royceでは、SAT(Satellite Aided Transmission)というGPS連動型のトランスミッション制御が車両に導入されている。具体的にはGPSで自車位置を特定した上で、ドライバーが認知するよりも前方までを見通し、現在位置と走行スタイルに基づきドライバーの動きを予測し、進路に合わせて最適なギアを選択するという機能だ。

 こうした予測型の運転支援システムは、自動車サプライヤーの独Continentalも「Electronic Horizon」という名の下に開発を進めており、GPSの位置情報が要素として組み込まれている。昨今は将来的な自動走行を見据えて車載センサ(ステレオカメラ、レーザーレーダー、超音波センサなど)による自己位置特定技術が注目を浴びているが、衛星からの位置情報も引き続き重要な要素なのだ。

Audiが駆動技術や自律制御技術を惑星探査チームに提供

 カーナビゲーション以外でコラボレーションが進んでいるのが、自動走行技術やロボット工学分野だ。冒頭に紹介したように6月25日に、Audiが同じドイツの民間月面探査チームであるPart-Time Scientistsへの技術支援を発表した。同チームは2017年末までの民間月面探査を目指す国際レース「Google Lunar XPRIZE」に参戦中である。

 具体的な支援内容としては、Audiが培ってきたクワトロ技術(Audi独自の四輪駆動技術の呼称)、e-tron技術(Audi独自の電気駆動技術)、軽量化などに加えて、自動走行技術も含まれる。現在既に10人がこのプロジェクトにかかわっている。さらには試験環境や実証環境の支援、品質保証など幅広い支援を行っていくという。技術は自動車業界のみならず月面探査でも重要な技術だ。

 同レースに日本から参戦しているチーム「ハクト」の開発メンバーで、現在月面探査ローバーを開発中の古友大輔氏は「地球から38万キロメートル離れた月面で無人ミッションを遂行するには、ローバー自身に各種センサを搭載して、状況取得を行いながら走行できることが重要である。具体的には取得データを基に、地上のオペレーターによる遠隔操作と、ローバーに組み込まれた制御ロジックによる自律制御を組み合わせることが鍵だ」と語っている。

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