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» 2015年04月27日 08時00分 UPDATE

池田直渡「週刊モータージャーナル」:どうなる日本? 新時代を迎える自動運転技術 (1/3)

通常の交通環境下で、一般のドライバーが乗るクルマを自動運転させる――ボルボが本格的に、自動運転車の普及に取り組み始めた。スウェーデンは国をあげてこのプロジェクトをサポートしているが、日本の自動車メーカーはこの流れについて行けるのだろうか。

[池田直渡,ITmedia]

 「自動運転はいつ頃可能になるか?」もしそう質問されたら、あなたはどう答えるだろうか。正直に言えば、筆者はまだまだ先のことだと考えていた。

 以前このコラムでも紹介したように、アウディが自動運転だけでサーキットをレーシングスピードで走ったり、ベンツが一般道路をメーカーのドライバーの監視付きで走ったりできることは筆者も知っている(参考動画を本記事内に掲載する)。しかし、3月6日にボルボが発表したプレスリリースを見て我が目を疑った。そこには驚くべきことが書かれていたのだ。

 ボルボは、一般の自動車ユーザーが乗車する自動運転車を、実際の交通環境下で実現することを可能にする、独自の完成したシステムソリューションを発表します。「私たちは、自動運転の分野で今まで実現したことがない未知の領域に向かって進んでいます。通常の交通環境の下、一般のドライバーに自動運転車を利用可能なものとする、という野心を持って実証実験へのステップを踏み出すということは、これまでに誰もなしえていないことです」

 つまりボルボは、サーキットのようなクローズドコースではない一般道を、メーカー社員ではない普通のユーザーのクルマで自動運転させると言っているのだ。

ay_vol01.jpg 3月6日のプレスリリース「ボルボ 自動運転車を実際の交通環境に導入する独自のシステムソリューションを発表」

自動運転の技術的背景

 少し前まで、公道での自動運転は路面に埋め込まれたビーコンを頼りに走る、つまり見えないレールの上をなぞりながら走るものになると思われていた。この仕組みによる自動運転は、お台場のメガウェブで「e-comライド」(2010年に終了)として試乗が可能だったので、体験したことがある人も多いだろう。

 ところがその後、自動運転の方向性は大きく変わった。ビーコンなどの設備を使わず、ごく普通の道路を、車両に搭載されたデバイスだけで走るようことができるようになってきたのだ。

 自動運転の基礎となるのは「バイワイヤー」と呼ばれる技術だ。ここで言うワイヤーとは電気配線のことで、車両のコントロール系を物理的接続ではなく電気接続によって行うことを指す。

 例えば、かつてのアクセルペダルは金属製のひも、つまりスチールワイヤーによって物理的にエンジンの吸気口のバルブを動かしていたが、いまではそんな仕組みを使っているものはほとんどない。ではどうしているかと言うと、ペダルに仕込まれたセンサーによって踏み込み量と速度を検知して、電気信号としてコントロールユニットに送り、車両各部に張り巡らされたセンサーユニットからの信号と合わせてエンジン吸気口のバルブをモーターで駆動するのである。

 ブレーキもそうだ。フェイルセーフの考え方に基づいて、油圧回路はブレーキペダルとブレーキ本体の間を直接つないでいるものの、さまざまな制御のための電気式のアクチュエーターがドライバーの運転を補助している。例えばパニックブレーキの時、普通のドライバーは最短制動距離で止まれるほど強くペダルを踏めない。そこでアクチュエーターが補助して、ブレーキ油圧を一気に高める制御をしている。仮に踏みすぎてタイヤがロックしてしまったら、今度はその油圧を緩める。タイヤのグリップは滑り率20%の時が最も大きなグリップを発揮するので、車両制御コンピューターがそこに合わせて調整する。

 ハンドルも電気化されているが、これはアクセルやブレーキとは経緯が違う。もともとはコストダウンと省燃費が主目的だったのだが、かつて油圧で補助をしていたパワーステアリングは、現在急速に電動補助に切り替わりつつある。パワステが電動になれば、電気でハンドルを切ることが可能になる。

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