「レジリエンス」ブームとサントリーの微妙な関係スピン経済の歩き方(3/4 ページ)

» 2015年04月14日 08時17分 公開
[窪田順生ITmedia]

サントリーが「ルコゼード」と「ライビーナ」を買収

 ただ、これも冷静に考えれば納得だ。日本では子宮頚がんワクチンや抗うつ剤パキシルを出しているガチガチの製薬会社のイメージが強いかもしれないが、実はGSKはブドウ糖がたっぷり入った栄養ドリンクを販売する清涼飲料メーカーでもあったのだ。

 有名なところは、1927年に発売されてから本国の英国で80年以上愛されているスポーツ飲料・エナジードリンクの「ルコゼード(Lucozade)」。そして果汁・濃縮飲料の「ライビーナ(Ribena)」。日本人からすると「何それ」という感じだが、ルコゼードはF1のマクラーレンとパートナー契約を結ぶなど欧州での知名度はかなりある。また、この両ブランドは「GSKに多大な貢献を果たした」とトップが褒め称えるほど巨大製薬企業の経営に影響を与えた。いわば“功労者”である。ブドウ糖なんていらないなどと口が裂けても言えない。

 事実、オックスフォードとハーバードの研究者たちが栄養ドリンクには大量のブドウ糖やらの糖分が含まれているので、飲み過ぎると栄養になるどころか、かえって害のほうが深刻だみたいな発表をしたら、すぐさまGSKは「栄養ドリンクは、40年以上欧州食品安全機関によって検証されており、科学的証拠に基づいています」なんて反論コメントも出している。そんな“ブドウ糖押し”だった企業が、レジリエンス研修をつくれば、「ブドウ糖で感情をコントロールしましょう」みたいなカリキュラムが出てくるのも当然かもしれない。

 しかし、現在のGSKは、もはやかつてほどブドウ糖を擁護(ようご)していないかもしれない。本業である製薬事業へ注力をするため、ルコゼードやライビーナという2つのブランドを2013年に2106億円で売却してしまったからだ。

 買ったのは、日本のサントリー食品インターナショナル(以下、サントリー)である。といっても、フランスの国民的清涼飲料オランジーナ(ORANGINA)のように日本で展開をするのではなく、あくまで欧州市場での展開を考えた買収なんだとか。

 余計なお世話かもしれないが、これは非常にもったいない。

80年以上の歴史があるルコゼード(出典:サントリー)

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