「レジリエンス」ブームとサントリーの微妙な関係スピン経済の歩き方(2/4 ページ)

» 2015年04月14日 08時17分 公開
[窪田順生ITmedia]

グラクソ・スミスクラインの判断

 では、具体的に何をすればいいのか。そこで『世界一受けたい授業』や『クローズアップ現代』で例として挙げられたのが、「世界的製薬会社のレジリエンス研修」である。

 両番組とも企業名は出ていないが、これは英国の製薬大手グラクソ・スミスクライン(以下、GSK)が8年前から行っている研修プログラムだ。

 全力でのランニングを何度も繰り返すインターバルトレーニングなどがレジリエンスに効果があるということで、研修に参加した世界各国1万人の社員のうち約8割が、職場におけるメンタルヘルスを改善し、仕事のパフォーマンスが上がったという結果が出たんだとか。

 体を動かすことは「うつ」にもいいとされているので、「そりゃそうでしょ」と思う人もいるかもしれないが、これだけではない。GSKでは独自の「レジリエンスにいい」という食事方法も社員に推奨しているのだ。どういうものかは『クローズアップ現代』の番組ページで詳しく紹介されている。一部引用しよう。

 ポイントとなるのは、脳のエネルギー源となるブドウ糖(グルコース)。ブドウ糖が少なくなると集中力が落ち、感情の起伏が激しくなるといわれています。食事を少量ずつ3時間置きにする事で、ブドウ糖を一定のレベルに保ち、感情をコントロールする力を高めレジリエンスにつなげようというやり方です。(参照リンク

 これを聞いてちょっと意外に思った。以前コラムで紹介したが、「ブドウ糖(グルコーゲン)は脳の唯一の栄養分です」みたいな話は医学関係者のなかでも賛否両論ある(関連記事)。脂肪からつくられるケトン体でも十分賄(まかな)えることや、体には「新糖生」という機能があることが分かってからは、そこまで必要じゃないんじゃないのという見方も多くなってきている。

 お菓子や健康食品のメーカーならば分かるが、EBM(evidence-based medicine:根拠に基づいた医療)を掲げて数多くの製薬を生み出している巨大製薬会社である。医療知識が豊富な社員もたくさんいるのだから、こういうダイナミックな研修プログラムを組んでツッコミが入ったりしないのか。

(出典:NHKの『クローズアップ現代』)

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