試乗して分かった北陸新幹線の「ビジネス力」杉山淳一の時事日想(5/6 ページ)

» 2015年02月13日 08時00分 公開
[杉山淳一Business Media 誠]

富山県に配慮したダイヤ設定、しかし運賃は上がる

 車中で行われたJR西日本へのインタビュー取材では、主に「富山県と近畿方面への配慮」と「北陸と首都圏方面への営業施策」について聞いた。北陸新幹線の開業により、金沢・富山から首都圏への移動は便利になる。しかし、富山県と近畿方面については、今までは乗り換え無しで特急「サンターバード」が走っていたところ、今後は金沢で新幹線乗り継ぎとなる。富山県知事はJR西日本に対し、大阪・名古屋方面との直通特急存続を求めていた。

 この「富山問題」について、JR西日本は所要時間と料金のメリットを強調した。所要時間については、金沢駅で約8分間という、ゆとりある乗り継ぎ時間を設定した。金沢駅と富山駅を結ぶシャトル列車「つるぎ」を多数設定し、東京方面行きの列車と10分程度の時間差で運行する列車もある。「かがやき」「はくたか」で兼用しても良さそうなものだけど、わざわざ「つるぎ」を近畿方面乗り継ぎ専用列車として走らせている。

 金沢駅は3層構造で、3階に新幹線と在来線のホームがあり、2階が乗り換え通路、1階が出口改札と自由通路になっている。新幹線と在来線の乗り換え改札は2階のコンコース部分で結ばれており、出口改札のある1階まで下りる必要はない。確かに乗り換えはスムーズだ。ただし、乗り換えしても大阪駅〜富山駅間では従来より所要時間が平均5分、最大8分程度。富山県東部の黒部宇奈月温泉駅、新潟県の糸魚川駅からは短縮時間がもっと大きいとはいえ、乗り換えの発生と短縮時間のバランスは微妙だ。

 大阪〜富山間は現在発表されている運賃、料金で在来線特急直通時代と新幹線乗り継ぎ以降を比較すると、新幹線乗り継ぎのほうが若干の値上げとなる。JR西日本は北陸新幹線でもインターネット予約割引「e5489サービス」を実施するというけれど、その予約割引料金の新旧比較でも新幹線乗り継ぎのほうが少し高い。その値上げが所要時間短縮に見合っているかも微妙で、乗り換えの不便さともバランスが取れていない。

長野駅に揃った北陸新幹線車両。奧から「あさま」E2系、中央がE7系、手前がW7系。E7系とW7系の差異は小さい 長野駅に揃った北陸新幹線車両。奧から「あさま」E2系、中央がE7系、手前がW7系。E7系とW7系の差異は小さい

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