イケアは何を間違ったのか 地図表記を巡って大騒動窪田順生の時事日想(2/4 ページ)

» 2014年12月09日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

自分たちの考えを示すことがポイント

呼称問題を巡って、イケアは騒動の当事者に(出典:Wikipedia)

 なんて話を聞くと、なかにはイタリアの携帯ケースメーカーのことを思い出す方もいるのではないか。昨年5月、日章旗のデザインがほどこされたケースを発売して、韓国から電凸ならぬメール凸で攻撃されたBenjamins社である。

 確かに、製品にまつわる言いがかりに屈して謝罪するという点では同じだが、このBenjamins社とイケアの対応は危機管理という点においては雲泥の差がある。前者は負けたけれども、企業としての主張はしっかりと世に伝わった。しかし、イケアの場合はズルズルとなし崩し的に理不尽な要求を受け入れてしまったような印象を与えている。つまり、今後同様のクレームを招いてしまうような危うい「負けっぷり」だったというわけだ。

 なんのこっちゃと思うかもしれないが、両社の対応は「初動」からしても大きな異なる。Benjamins社の場合、韓国からクレームの矢が飛んできた時、徹底抗戦の構えを見せていた。メールへの回答で、「単なる旗」だと切り捨て、こんな理屈を展開した。

 「あなたの言う通りならば、ドイツの旗は、ナチスがいたから、米国の星条旗は、原爆を投下したから、それぞれ使ってはいけないということなのか?」

 「私たちは今、2013年に生きている。製品がよければ買って、そうでなければ買わなければいい」

 このロジックがよいかどうかは問題ではない。Benjamins社はまず自分たちの考えを示した。理不尽なクレームに対応する際にこれは非常に大事なポイントだ。これからこの「考え」を巡って攻防が始まるからだ。

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