イケアは何を間違ったのか 地図表記を巡って大騒動窪田順生の時事日想(1/4 ページ)

» 2014年12月09日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 スウェーデンで創業して、家具やインテリアなどを扱う「IKEA(イケア)」が炎上している。

 きっかけは、韓国進出1号店のオープンを控えて配布されたカタログの中にあったプリミエールという壁掛けだった。これは世界地図のデザインがほどこされており、そのなかに「SEA OF JAPAN」の表記があることを目ざとい韓国人ユーザーが発見し、大騒ぎになったのだ。

 ご存じのように、かの国では「日本海」を「東海」と呼ぶ。国連公式文書では「SEA OF JAPAN」と謳(うた)っているいるし、中立・公平であるためにも併記とかバカげたことをしちゃいけないよ、というお達しがあったにも関わらず、「世界中の地図を東海にせよ」みたいな主張している。

 主義主張は自由であり、他国の者が口を挟むことではないが、問題はこれを「踏み絵」としてさまざまなグローバル企業に「お前は韓国をバカにしているのか」みたいに敵意むき出しでカラんでくる点だ。

 イケアはその標的とされてしまったのである。

 まずトライしたのは「このプリミエールは韓国では売りませんのでご安心を」と逃げる手法だったが、そこは百戦錬磨の愛国クレーマー。そんなその場シノギの対応に納得するわけもなく、「ってことは他の国ではこの商品を売っちゃうわけだ。韓国をコケにするような企業の製品なんかオレたちゃ買ってらんない」と不買運動に発展しそうなほどの大きなムーブメントに発展してしまったのだ。

 結局、11月17日にイケアコリアは陥落。報道資料で「スウェーデン本社に『東海』との併記をリクエストしているところだ」と説明し謝罪。続く12月5日には、「毎年、全製品群の約20%を新製品に入れ替えている」として問題となっている製品も来年中にはラインナップから除外される見込みだと発表したのだが、これを日本の一部メディアが、「韓国の抗議に屈して全世界で販売中止」と“誤報”したことで騒動が日本にも飛び火。ネト……いや、愛国心溢れる方たちの不買運動リストに入るというイケアジャパンにとって、クリスマス商戦を前に冷や水を浴びせられるような事態になってしまったのだ。

韓国進出1号店をきっかけに起きた“イケア騒動”は日本にも飛び火
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