サイト「どうして解散するんですか?」を立ち上げた大学生は、なぜ小学生を演じたのか窪田順生の時事日想(3/4 ページ)

» 2014年12月02日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

「汚いひなぎく」のスキームはいまだに健在

 コロンビア州に住む、キティちゃん柄の上着を着た彼女が、ポロポロと大粒の涙を流す映像がYouTubeにアップされたのは2012年10月30日のことだった。母親がどうして泣いているのかと尋ねると、アビゲイルちゃんは涙をこらえながら言った。

 「ブロンコ・バマ(バラク・オバマ)とミット・ロムニーばっかりで、もう嫌になっちゃったの」

 実はこの時期、オバマ大統領とロムニー候補の大統領選挙キャンペーンのまっただなか。かの国では、選挙はお祭り。テレビもラジオもこの2人が互いを批判するシーンばかりになっていたのだ。いい大人が互いをけなし合う姿は4歳児にはかなり辛いものがある。

 ストレスがたまっていたところ、ショッピングに行こうと母とクルマに乗ったところ、ラジオからおなじみの2人の名前が出た。どこまでも追いかけてくるバマとロムニーにとうとう泣き出してしまったというわけだ。

 「選挙はもうすぐ終わるから辛抱して」と母がなぐさめると、「分かった」と必死に涙をこらえるいたいけな少女の映像は大反響を呼び、瞬く間に視聴回数は1000万を超え、SNSでは同情や共感するという声が多く寄せられた。さらに、CNNなどでも紹介されて彼女を直接的に泣かすこととなったラジオ局も謝罪。こんな反省まで口にした。

 「実を言えば、われわれも選挙キャンペーンはちょっと長すぎると思っていました。『あと数日、あと数日』と念じつつ乗り切りましょう」

 かた苦しい政治評論家やジャーナリストが「今の選挙キャンペーンは明らかに度を超えている」なんて問題提議をしても世の中は動かない。が、同じことを4歳の少女が訴えれば多くが耳を傾ける。「汚いひなぎく」のスキームはいまだに健在ということを改めて証明してみせたのだ。

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