サイト「どうして解散するんですか?」を立ち上げた大学生は、なぜ小学生を演じたのか窪田順生の時事日想(2/4 ページ)

» 2014年12月02日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

最高権力者にとってネット上でのプロパガンダは「脅威」

 これは安倍さん個人の人間性というより、権力者の“業”のようなものだ。韓国ではサイト上であまりに悪口が多いということで、朴槿恵(パク・クネ)大統領がネット検閲に乗り出すと騒ぎになっている。「それはホラ、あの国は……」なんて声が聞こえきそうだが、「自由と民主主義」を声高に叫ぶ米国だって変わらない。ブッシュ政権下ではネットに大統領の悪口を書込んだ14歳の少女がシークレットサービスから取り調べを受けた。

 つまり、国や人種は関係なく、「最高権力者」にとってネット上でのプロパガンダは「脅威」以外の何者でもなく、相手が「子ども」だからとて笑ってスルーできる類の話ではないのだ。

 いやむしろ、強権をふるう者こそ、「子ども」を警戒しているくらいだ。例えば、米国では古くから「子ども」を使った印象操作が行われている。

 その中でも有名でプロパガンダの教科書なんかに載っているのが、1964年、ジョンソン大統領が使った「汚いひなぎく」というテレビCMだ。

 ベトナム戦争への強硬路線を唱える対抗馬・ゴールドウォーターを批判するためにつくられたもので、幼い少女がひなぎくの花を数えている姿に、核ミサイルのカウントダウンを被せ、「子どもたちが生きる世界をつくるか、それとも闇に沈んでいくか、これが選挙にかかっています」なんてナレーションを流す。いくら強い米国を愛する人々も、子どもの未来を奪う者に票を投じようとは思わない。このネガティブキャンペーンは大成功し、ジョンソンは大差をつけて勝利した。

 半世紀前のプロパガンダだが、このようなスタイルは現代にも十分に通用する。湾岸戦争でイラク兵が病院に押し入って新生児を殺してまわったというプロパガンダをクウェート政府が仕掛けた時に「演者」になったのは15歳の少女だった。世論を喚起したければ子どもを使え――。この鉄則はどんなにテクノロジーが進んでも変わらない。

 それを示すのが、「アビゲイルちゃん4歳」である。

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