サッカー日本代表が、決勝トーナメントに進出できなかった理由臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(2/4 ページ)

» 2014年06月25日 07時45分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]

もう1人の「特定の選手」

長谷部誠 2014カレンダー』(エンスカイ)

 そして、もう1人の「特定の選手」。ザックジャパンのキャプテンに任命されていた長谷部をめぐっては、こんな出来事もあった。ザッケローニ監督は2013年7月に「キリンチャレンジカップ2013」の代表メンバーとして当時所属先のヴォルフスブルグで出場機会に恵まれていなかった長谷部(現ニュルンベルグ)を招集。その際に「長谷部は所属クラブで出番に恵まれていないので、代表で起用する」と口にしたことで物議を醸したのだ。

 就任当初に「所属するクラブで結果を残しているレギュラー選手だけが代表に選ばれる資格がある。私はこの考えを曲げるつもりはないし、どんなことがあっても貫き続ける」と明言していた言葉はあっさりと覆され、それまで代表メンバーに名を連ねながら落選した選手らから「やっぱり長谷部さんは特別扱いなのか」というブーイングが上がったのである。

 長谷部は2010年の南アフリカ大会から長らく代表のキャプテンを任されていた、いわばチームの精神的支柱。経験、能力もともに豊富で、そう簡単に外せないのは分かっている。だが、ザッケローニ監督がまずかったのは自ら発したはずのマニフェストを何の説明もなく撤回してしまったことだろう。

 この時の長谷部だけでなく、指揮官は今大会でもACミランで鳴かず飛ばずの本田、そしてマンチェスター・ユナイテッドで不遇にさらされている香川を招へいしている。もちろん、本田と香川についても両者以上のパフォーマンスを見せられるプレーヤーがいるかと問われれば「NO」。だが、就任当初に口にしていたはずの方針は、所属クラブで結果を出せずにいた2人を招へいしたことで、結局ここでも自らの“ブレ”が図らずも証明されてしまった格好と言える。

 「長谷部も、そして本田も香川も日本代表には不可欠な選手。それは当たり前であろう。ただ、ザックは日本代表を自分の手で大きく変えたいと思うが余り、最初から余計な制約を日本のメディアへ口にし過ぎて自分で自分の首を絞めてしまった。しかもザックはイタリア・セリエAで多くの名門クラブチームで指揮を執ってきた時から、我々現地メディアによって『変心グセがある』と指摘されていたのだから、それをいまだもって自覚していないと言われても仕方がない」と分析するのは、イタリアのスポーツ紙『ガゼッタ・デロ・スポルト』のニーノ・バッサーニ記者だ。

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