こうした言行不一致はチーム内外から明らかな不信感を招く要因につながる。テクニカルの面については触れるつもりはなかったが、思えばベンチからギリシャ戦(5月19日)で試合終盤に指示された「パワープレー」も“ブレ”につながるだろう。就任当初、ザッケローニ監督は「パワープレー封印」を高らかに宣言していたからである。
母国イタリアで成功と失敗を重ねながら指導者としての経験を積み上げたザッケローニ監督。しかし史上最強と呼ばれて求められるものも大きかった日本代表チームでは今回のW杯で期待以上の成績を残せずに終わった。初めて指揮を執った母国以外の国、そして自身初のナショナルチーム監督という重責は、彼の中で想像以上に重くのしかかっていたようである。前出のバッサーニ記者は、こうも続けた。
「肩入れや変心グセはイタリアであれば、メディアからすぐに指摘されてバッシングされる。だからセリエAでの監督時代は、そういう批判を恐れるから表面化したとしてもすぐに修正できた。何でも持ち上げる傾向の強い日本メディアは彼にとって優し過ぎたのだろう。ザック自身も『日本人は優しくて、勤勉だ』と満足そうに評していたが、批判がほとんどなく全幅の信頼を置かれたことで彼の心に緩みが生まれてしまったのだと思う。
それに各国から自己主張の強いプレーヤーが多く集まるセリエAのクラブチームと違って、日本のプレーヤーは基本的に大半が大人しい。誰も表立って文句を言わないから、ザックの“悪い病気”は慢性化して最後は手が付けられないような状態になってしまう。今大会の日本はつまり、そういうことになってしまったのではないか」
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