利益率が高くなる「理由」を持つ――冠婚葬祭モデル「王道」のビジネスモデル(2/2 ページ)

» 2014年04月24日 08時00分 公開
[細谷功,井上和幸,西本伸行,Business Media 誠]
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「払っても仕方ない」と思える業界を見つける

 冠婚葬祭モデルとは、支払いと消費が違うことで利益率を高く保つことができるビジネスモデルでした。このように、価格が下がりにくい理由を持つビジネスというのは他にも存在します。

 まずは嗜好(しこう)品が挙げられます。タバコは、値段は気にしてもついつい買ってしまうので、利益率が高くなりやすいビジネスです。他にも腕時計やカメラなども値段にかかわらず売れるものと言えます。こだわるものにはお金を払うというのが嗜好品の特徴です。比較的高い値段でも売れるので、必然的に利益率も良くなります。

 健康に関連するものも利益率がよいビジネスです。病院の費用は安ければよいわけではありません。健康であることがお金よりも大事と考える人が多いため、医療に関連したビジネスは価格が安定しやすいと言えます。健康食品なども同様で、高くても売れるビジネスと言えます。

 新しいビジネスを立ち上げる場合、このような利益が得やすい業界を選ぶのも1つです。利益が得やすいということは起業してもすぐに黒字になりやすく、利益があれば投資もでるのでビジネスを拡大しやすいとも言えます。

「高い給料でも仕方ない」と思える仕事をする

 高くても仕方ないと思う商品やサービスがあるように、給料が高くても仕方ないと思える仕事もあるはずです。

 例えば、医師や弁護士と呼ばれる人達はそれに当てはまるかもしれません。では、なぜそう思えるのでしょうか。一番の理由は、自分や会社にとってそのときの緊急度が高く、必要なものであるけれども自分にはできず、その人達だけができるものであるからです。

 医師や弁護士ほどでなくても、「士」業と呼ばれる資格を持つ仕事は、給料が高くなりやすいと言えます。それは、程度の差はあれ、自分や会社には必要だが自分にはできないという点で「高くても仕方ない」と思える職種だと言えるでしょう。

 といっても、誰も簡単に資格を取ることができるわけではありません。そもそも簡単に取ることができる資格は、ありがたみがありません。医師になるといっても、大学に6年間通わなくてはいけないですし、研修医期間もありますので、社会人になってから目指すというのは非常に難しいでしょう。

 それでは、資格のない人が「給料が高くても仕方ない」と思える仕事をすることはできないのでしょうか。「自分にとって必要なものであるけれども、自分にはできない」というシチュエーションは、日常の仕事の中にもあります。

 分かりやすいのはナンバーワンになることでしょう。営業部門において、ナンバーワンの営業成績を収めれば、周りの人は「自分にはできない」から「給料が高くても仕方ない」(=だから給料を上げてあげよう)と思うはずです。別に資格は必要ありません。

 ただし、これは当たり前のことと言えば当たり前で、それが最初からできれば苦労しません。

 実は、ナンバーワンにならなくても、会社や周囲の人から「自分にはできない」と思ってもらい、「給料が高くても仕方ない」という状況を作り出すことができるのです。

 例えば、急に英語が必要となった職場で1人だけ英語ができれば、周りの人からは「自分にはできない」から「給料が高くても仕方ない」と思ってもらえるはずです。ほかにも、「このシステムはこの人にしか使えない」「何分野の人脈なら、彼が一番持っている」など、たくさんあると思います。周りの人はできない、自分しかできないスキルや能力というのは、それだけで価値があることなのです。

 自分しかできないスキルや能力というのは、決して世の中的に見て絶対的に優れたことでなくてもいいのです。「自分しかできない」ということはあくまで相対的な評価です。先ほどの英語の例で言うと、英語が必要とされる職場で、全員英語が話せるのであればそれは普通の能力と見なされますが、1人しか英語が話せないとなれば、それは特別な能力と思われます。

 自分が置かれた環境の中で、周りができないスキルや能力を身につけることで評価があがり、「給料が高くても仕方ない」(=だから給料を高くしよう)ということになるのです。自分が働く部門で評価される能力であって、意外とみんなが身につけていないことを見つけ、明日から取り組んでみてはいかがでしょうか。

 あるいは、今の会社では自分のスキルが一般的なものであっても、それができる人材が不足している会社を見つけ転職するという方法もあります。“お山の大将”狙いは賢くキャリアアップするうまい一手となります。

今回のポイント

生みだす:「高くても仕方ない」と思える業界・市場を選ぶ

生かす:自分だけの「高くても仕方ない」価値を作る


(次回は、「特売モデル」について)

著者プロフィール:

細谷功(ほそや・いさお)

ビジネスコンサルタント/株式会社クニエ コンサルティングフェロー。東京大学工学部卒業。

東芝を経てアーンスト&ヤング・コンサルティングに入社。製品開発、マーケティング、営業、生産等の領域の戦略策定、業務改革プランの策定・実行・定着化、プロジェクト管理を手がける。著書に『いま、すぐはじめる地頭力』などがある。

井上和幸(いのうえ・かずゆき)

株式会社経営者JP代表取締役社長・CEO。ドラッカー学会会員。1966年群馬県生まれ。1989年早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。

現在は、人材コンサルタントとして、企業の経営組織コンサルティング、経営人材採用支援・転職支援、経営人材育成プログラムを提供。

西本伸行(にしもと・のぶゆき)

ビジネスコンサルタント。元株式会社クニエ シニアマネージャー。


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