本連載は、細谷功、井上和幸、西本伸行著、書籍『ビジネスモデル×仕事術』(日本実業出版社刊)から一部抜粋、編集しています。
ビジネスモデルの世界には、コピー機の消耗品販売や広告で利益を得るなどの、長く続いているものが多くあります。これらは流行りものとは違い、長い年月の中で生き残ってきたものなので、それなりに安定して利益が上げられると言えます。成功している企業も多いので、参考にしやすいというメリットもあります。
本連載では、そのような安定感のある「王道」のビジネスモデルを
トライアルモデル
マッチングモデル
冠婚葬祭モデル
特売モデル
の4つに分けて紹介します。
なお、個人の仕事についても、これらのビジネスモデルから安定した働く基盤作りのヒントが得られるでしょう。
冠婚葬祭モデルとは、文字通り冠婚葬祭のような特別な消費におけるビジネスの仕組みを指します。具体的には、結婚や葬儀、各種お祝いの贈り物などのビジネスです。
これらに共通していることは、自分だけで完結しない消費であるということです。
例えば、結婚式の場合は、結婚する人達がお金を支払いますが、参加者からご祝儀でお金をもらいますので、間接的に支払ってもらっています。何かのお祝いに贈り物をする場合は、贈る人がお金を支払いますが、利用するのは贈られる側です。つまり、お金を払う人と使う人が同一人物でないのです。
この場合、ある特徴的なことが発生します。それは「安いほうがよい」という単純な思考になりにくいということです。
例を挙げてみましょう。自分でビールを飲むときはできる限り安く購入したいと思う人が大半だと思います。節約のため、第三のビールを選ぶ人もいるでしょう。ところが、お歳暮でビールを贈るときはどうでしょうか? プレミアムビールを定価で買って、さらに贈答用の箱代を払って送るのではないでしょうか。たとえ半額になったとしても、ビニール袋に入れて贈る人はいないはずです。
結婚式をしたことがある人の中には、結婚式の花代の高さにびっくりした人もいると思います。高級なものであることは確かですが、一般的な花屋で買う高級なものと比べても何倍もの値段になります。しかし、「じゃあ、花はナシで……」ということにはなりません。それはご祝儀を払ってくれる参加者がいるからです。「花がない結婚式は失礼」という感覚が働き、結果的にそれなりにお金を払うのです。
つまり、冠婚葬祭などのビジネスの場合は安くしたいというニーズが働きにくく、価格競争になりにくい場合が多いのです。そのため価格が安定し、利益率が高いビジネスになりやすいのです。
これに近いのは、観光地のお土産などもそうです。一般的なお菓子の値段に比べるとかなり高めですが、それでも購入する人はたくさんいます。これは「お土産としてあげるのに、安いものでは失礼」という気持ちがそうさせると言えるでしょう。
もう少し違う見方をすると、会社で利用するものにも実はこの関係が成り立っています。例えば、会社のお金で購入する備品などは比較的高めの価格設定のものが多くあります。また、懇親会の費用や出張のホテル代など、会社が設定する予算の上限ギリギリの値段で利用するということもあるのではないかと思います。
会社が支払って自分が消費するというものは、支払う人と消費する人が違います。自分で支払う場合は誰もがお金にシビアになると思いますが、経営者としては困ったものですが、会社が支払う場合はそれほどにはならないはずです。
このように消費する人とお金を払う人が違うビジネスは、比較的利益が得やすいものなのです。
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