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» 2014年01月14日 08時00分 UPDATE

女神的リーダーシップ:「みんなの家」で展開される“女神的”外交 (1/4)

スウェーデンでは、公式ツイッターアカウントの運用をあえて国民に開放し、世界に向けて思ったことをつぶやけるようにしている。政府観光局のこうした取り組みは、国のブランド構築に向けた数年来の取り組みの一環なのだ。

[ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ,Business Media 誠]

集中連載「女神的リーダーシップ」について

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 本連載は、ジョン・ガーズマ+マイケル・ダントニオ著、書籍『女神的リーダーシップ』(プレジデント社)から一部抜粋、編集しています。

「世界を変えるのは、女性と“女性のように考える”男性である!」

ギリシア神話の女神アテナは、文化文明と芸術工芸の守護神であり、戦いの神としての顔も持つ、武力ではなく知恵によって人々に勝利をもたらす。

世界13カ国、6万4000人を対象にした調査から明らかになった、理想のリーダー像とは? 世界で成功している起業家、リーダーが示す特徴の多くは、思想や宗教、文化に関係なく「誠実」「利他的」「共感力がある」「表現力豊か」「忍耐強い」など、一般に「女性的」といわれる資質であることが浮彫となった。

ヒラリー・クリントン前国務長官が「賛辞」を送り、『ワーク・シフト』の著者、リンダ・グラットン教授が絶賛した話題の書、ついに翻訳化!


民間人たちによる「おもてなし」

 スウェーデンでは、謝肉祭の最終日にセムラというシュークリームに似たお菓子を食べる慣わしがある。あっさりして、5つや6つ平らげてもまだまだ食べられそうだ。お祭り騒ぎのただなかにこの街に着いたわたしたちは、マリア・ジヴから、たくさんのセムラと温かいコーヒーで迎えられた。寒さに震えながら街を歩いた後だけに、「歓迎してくれている」と感じた。それもそのはず、スウェーデンへの来訪者すべてを歓迎するのがジヴの仕事なのである。

 彼女は、「ビジット・スウェーデン」キャンペーンを張る政府観光局のマーケティング責任者。そんな仕事柄、自国のイメージを守り、適切な広報に努めることも期待されていると思いきや、スウェーデンの公式ツイッターアカウント、@Swedenの運用をあえて国民に開放し、全世界に向け思い思いにつぶやけるようにしている。発信者は一週間ごとに替わり、制約や監視をほとんど受けずに自由にツイートする。わたしたちはこれに興味を引かれてジヴに取材を申し入れたのだった。

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 ツイッターのこうした運用は、国のブランド構築に向けた数年来の取り組みの一環だという。ジヴの説明はこうだ。「公式の統一見解のような内容をツイートするよりも、国の考えを代弁するのは国民なのだから、希望者を募ってツイートしてもらったらいいのではないか、ということになったのです。みなさんに任せて、あとはうまく行くよう祈るだけですから、勇気が要ります。ですが、わたしたちは国民を十分に理解しているつもりです」

 週替わりのツイッター担当には、お金持ち、貧困者、同性愛者などなど、男女問わず実にさまざまな人々が志願した。最初のころに好評を博したのは、司祭、牛飼い、それからハンナ・ファンゲというレズビアンのトラック運転手らによるツイートだった。ファンゲは、自分のトラックを追い越して行った家畜運搬車からの異臭について、歯に衣着せぬつぶやきを発した。ほかの人々は、食べ物、カルチャー、雪、北欧と北米の鹿の違い、といったテーマを取り上げた。

 公式ツイッターのこうした開放的な運用手法は、政府が数年前にスウェーデンという国とその国民の持ち味を探るなかで出てきた価値観を反映している。この国は「開放的」で「思いやり」があり、「革新的」である。政府観光局のツイッター運用法は間違いなく革新的だった。一般の国民が観光客向けの公式メッセージを発するのは、世界広しといえどもスウェーデンだけである。しかもこの試みは、一生懸命考えたうえで国を代表するにふさわしいツイートを発する、心遣い溢れるボランティアに支えられているのだ。「スウェーデン人は他人の意見への関心が強いほか、国を愛していて、とても謙虚です」とジヴは言う。

 最初の数カ月のツイートは、ごく一握りの例外を除いて政府の信頼に応えるものだった。こうした成果が得られたのは、社会参加が十分に根付いているからであり、これはヨーロッパの多くの国にも共通する傾向である。わたしたちが訪れたストックホルム、ブリュッセル、ベルリンのいずれにおいても、市民活動の長い伝統があるため、きわめて女性的な、つまり開放的で権威的でない流儀によるイノベーションが盛んである。そのなかでもひときわ目立つのがビジット・スウェーデンであり、100を超える国々からツイッターのフォロワーを集めるなど、世界中の注目を浴びている。スウェーデン人はこれを誇りにしている。

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