「みんなの家」で展開される“女神的”外交女神的リーダーシップ(2/4 ページ)

» 2014年01月14日 08時00分 公開
[ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ,Business Media 誠]

自分たちの文化がどう見られているのかが分かる

 ジヴは「わたしどもは、オープンな姿勢や自信を示そうとしています。ツイート内容に口を挟んだり、削除したりすることはしません。世界中の人々を意識していますから」と語る。もっとも、国境を越えてこれほどの反響が寄せられるとは想定していなかったという。

 「ありふれた内容をつぶやいただけなのに、他国の人々から大きな関心が寄せられ、みんな驚いています。自分たちの文化が外からどう見られているのかが分かって、誇りにつながっています」

 食文化の振興を目的としたプロジェクトも進めており、いつもは謙虚な国民がスウェーデン料理を積極的に紹介する意義に目覚めるきっかけとなった。フランスやイタリアに劣らない豊かな食文化があると気付いたのだ。

 驚いたことに、これらの施策の担当者は、政府上層部に許可を求めようとは考えもしなかったという。意見交換の場を設けてできるかぎり大勢の意見を集めようとするのは、実にスウェーデンらしいやり方だ。この国では、法律上も民主主義が徹底していて、政府は厳格な情報公開法に従ってほとんどの情報を開示している。選挙の投票率は平均でおよそ85%にも達し、投票用紙には必ず「その他」という欄があって、どの投票先にも満足しない投票者はその思いを表明する道がある。

 「外務大臣に、ツイッターを使った広報キャンペーンの感想を求めました」とジヴは言う。「実は、外務大臣を批判するツイートがあったのです。一般人に公式アカウントの運用を開放するのは問題だと思うかどうか、大臣に尋ねたところ、『いや。とてもよいことだと思う。スウェーデンは1人ひとりの国民によって支えられているのだから』という返事でした」

 実際、自国を紹介したり、他国の人々の考え方を探ったりすることへの関心は、国全体で高まっている。この潮流について尋ねると、ジヴは先駆的な業績で知られる心理学者エイブラハム・マズローの「欲求階層説」を引き合いに出した。人間は生存に欠かせない欲求が満たされると、道徳や社会に関するより高い次元の欲求を抱くものだという説である。つまりジヴは、スウェーデン人と外国からの来訪者はともに、1週間、1日、あるいは1時間でもじかに接する機会を持ちたいと願っているはずだと考えているのだ。観光バスによるお仕着せのツアーは時代遅れになり、これからは顔の見える個人によるおもてなしが主流になるというわけだ。

 公式アカウントを使ったキャンペーンには問題点もある。2012年6月、ある女性によるツイートがユダヤ人排斥と受け止められ、論争を引き起こした。多数のニュースメディアでも取り上げられたが、ビジット・スウェーデンのチームはツイートを削除も訂正もしなかった。政府の広報官はBBCニュースの取材に「小細工をすると、好奇心を刺激して野次馬根性に火をつけますから」と語った。

 ジヴの考えはどうだろう。「論争からは多くの学びが得られます。スウェーデン人は(マズローの)欲求階層の上のほうに到達しましたから、『自分は何者だろう』『ほかの人とどう違うのだろう』という究極の問いへの答えを求めようとするでしょう。一時は表面的なものに目を奪われましたが、いまでは他者について知りたいという強い欲求を持っているのです」

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