ワーキングマザーはお荷物か?――あなたの会社が「ホワイト企業」になる方法これからの働き方、新時代のリーダー(後編)(1/5 ページ)

» 2013年12月26日 08時00分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

リニューアル記念企画「これからの働き方、新時代のリーダー」

 「アクションリーダーの『知りたい!』に応えるオンラインビジネスメディア」を統一コンセプトとして、9月2日にリニューアルしたBusiness Media 誠 & 誠 Biz.ID。リニューアルを記念して、スペシャルインタビュー企画を掲載していきます。

 本企画では、Business Media 誠編集部と誠 Biz.ID編集部がそれぞれテーマを決めてインタビューや対談を行います。Business Media 誠では「アクションリーダーに会いに行く」、そして誠 Biz.IDでは「時代の変化に合った働き方」をテーマに、さまざまな識者の方にお話を聞いていきます。

 →リニューアル記念企画「これからの働き方、新時代のリーダー」バックナンバー


 新卒採用の段階では、男子学生よりも女子学生のほうが入社試験などの結果が優秀で、採用には男子学生に"げたを履かせて”あげないと新入社員が女性ばかりになってしまう、というのはよく聞く話である。

 入社後も、熱心に働き、良い結果を出す若い女性社員は多い。それでも多くの女性社員が出産を機に会社を辞めてしまう。さらに女性の管理職や役員ともなれば数は少なく、そういう人たちは家庭の心配をほとんどせず仕事に全力投球できるバリバリのキャリアウーマン、いわゆる「バリキャリ」であることが多い。それだけ、育児と仕事の両立は難しいからだ。

 それでも最近では子どもを出産したあと、時短勤務などの制度を使って会社へ復帰する女性社員が増えてきた。しかしワーキングマザーには補助的な業務しか頼んでいない……というのが多くの企業の現実ではないだろうか。

 前回のインタビューでは(参照記事)、非ブラック企業の中でも、「ホワイト企業」とはダイバーシティ経営に優れ、女性が働き続けやすく、活躍できる企業であり、ホワイト企業は業績も優れている傾向があると聞いた。もし自分の会社で、ワーキングマザーとして復帰した女性社員を戦力として生かそうと思ったらどのようにすればいいのだろうか? 『ホワイト企業』(文藝春秋)を監修した経済産業省 経済社会政策室 室長の坂本里和さんに、その具体的な処方箋を聞いていく。聞き手はBusiness Media 誠編集長の吉岡綾乃。

経済産業省 経済社会政策室 室長 坂本里和氏(右)

 →インタビュー前編:就活生・転職者必読! 経産省女性室長に聞く、「ホワイト企業」の入り方

「マミートラック」をなくしていくには

book 『ホワイト企業 女性が本当に安心して働ける会社』経済産業省監修(文藝春秋)

吉岡: 坂本さんは、大学を卒業後通産省(現在は経済産業省)に入省、いわゆる"キャリア官僚"をしながら4人(!)のお子さんを育ててきている、現役のワーキングマザーですよね。その一方で、現在は室長としてワーキングマザーを含む部下をマネージする管理職でもあります。ワーキングマザーの立場も、ワーキングマザーを部下に持つマネージャーの立場と両方の経験から、ここからはさらに具体的なお話を聞かせてください。

 女性から就職先として企業を見た場合に、働きやすい企業、つまり"ホワイト企業"かどうかを見極めるには、2つの評価軸があるとお話いただきました。「働き続けやすさ」という軸、つまり育休や時短勤務といった仕事と育児を両立する制度に注目しがちだが、それだけではなく、「活躍しやすさ」という軸も大事である、と(参照記事)

 ただ実際には、この2つを両立させるのは非常に難しいことですよね。多くの会社では、産休・育休を終えて職場に復帰してきた女性社員に対し、出産前と同じ仕事を与えることは非常に少ないと思うんです。親が一緒に住んでいて子育てを肩代わりしてくれる、という事情でもない限り、ワーキングマザーは「保育園のお迎えがあるので、毎日必ず定時に帰る」「子どもが熱を出したら休まざるを得ない」といった事態を避けて通れません。企業から見れば、フルタイムで働けない社員に、責任の重い仕事を任せるわけにもいかないからと、補助的な仕事、楽な仕事に回すケースが多いのではないでしょうか。

坂本: いわゆる「マミートラック」ですね。ママ社員向けのキャリアコースというような意味です。独身時代に営業の第一線で働いていた女性が、出産を機に管理部門などの内勤に回る、などの例が多いですよね。会社を辞めてしまうよりはいいですし、過渡期としては仕方ありませんが、「女性に対して優しい」けれど、キャリアアップにはつながりにくい。時間制約があるというだけで、それまでのキャリアが中断してしまうのはとてももったいないことです。

吉岡: 私も同感です。ただ、ワーキングマザーが補助的な仕事ではなく、出産前にしてきたのに近いような仕事をフルでやろうとした場合、どうしても周りにしわ寄せが出てしまうという現実があります。例えば定時で帰ったあとに突発的な作業が発生して、それを同じ部署の男性社員が肩代わりする……こういう不満がだんだんたまっていく、といった話はよく聞きます。職場の同じチームにワーキングマザーがいる、という場合に、うまくチームを回すための心得などはありますか。

坂本: 全体の働き方が変わらない中で、女性、特にワーキングマザーの働きやすさだけを考慮すると、周りの男性社員にしわ寄せがいくというのは、現実問題としてどうしても起こります。時間の制約がある人と、ない人との間で公平感を持つのはやはり難しいですから。子どもが熱を出したから休む、といった突発的な事態はどうしたって起こってしまう。これは仕方ないことで、どう対応するか? それを考えるほうが建設的ですよね。

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