求められる中高年人材になるために大切なのは「ドンピシャの経験」サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/3 ページ)

» 2013年11月04日 12時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

ドンピシャの経験がある人以外は採用したくない

 中途採用なら、経験のある人たちを中心に採用するのが一般的ですから、面接などでも「豊富な経験を持つ〜」というこの台詞は常識だろうと思っている人が多いと思います。しかし実は転職マーケットでも、「まったく経験がない」人で問題がないという仕事は少なくありません。また、経験から類推して仕事ができるかどうか判断するという選考方法もありますから、ドンピシャで「これができる人以外は採りません」と人を採用するケースはそれほど多くないのです。

 「経験したことがない人を採用するのは怖いですよ」と、あるバックオフィスの責任者を採用するために必要な資質を取材していたときに、その担当者が話してくれました。例えば、ある業務を遂行するために、一から十までの仕事があるとします。経験がある人なら、一から十まで仕事があることを理解しているし、実際に一から十までちゃんとこなすといいます。しかし経験がない人は、一から十までの仕事があることが理解できない。三から七までは見えているので、その部分は成したとしても、結果として一と二、八九十の仕事が残ったまま。「それでは仕事をやったことにはならない」と言うのです。通常の仕事だと、経験を重ねることで必要な仕事の範囲に対する視野も広がりますし、実際にできるようにもなります。が、全社的にも「数年に一度の仕事」だとしたら、失敗は許されないし取り返しもつかない。

 かつてそういう仕事は、いるのかいないのか普段は分からないようなベテランがサッと出てきて、経験を披露しながら過不足なく進めるという光景が普通でした。しかし今はそういう人はリストラされてしまい、会社にいないというケースが少なくありません。結果として、組織全体が「経験不足」の状態になってしまう。自分がその企業に在籍している間にもう一度あるかどうか、という仕事であっても、経験がある人を、企業は喉から手が出るほど欲しいというわけです。

完成させるという仕事ができる人が欲しい

 若手と呼ばれる年齢の人たちばかりで起業して、グンと成長している企業でも似たような話を耳にします。組織が大きくなるということは、法的な部分も含めて「整備をする」必要がたくさん出てきます。まったくの手探りでゆっくりと成長できればいいのでしょうが、急成長した場合そうはいかないようです。結果的に「実績あるベテラン」が求められ、組織を作っていくことになるのですが、これにしても「大手企業に在籍していた」という経験だけでは話にならないことが多い。組織が大きくなるプロセスを経験して、この先になにが起きるのかを理解し、キチンと手を打てる人が求められているのです。ここでも、文字通りドンピシャの経験がある人が求められる。

 新しいサービスをローンチしたネットビジネスなどでも、拡大期に入った企業は、事業責任者的なポジションに似たようなビジネスの経験があるベテランを配置する戦略を採るところも増えてきました。かつてなら「今までに誰もが考えもしなかったようなビジネスをするのだ。経験など新しさの邪魔に過ぎない」という発想の人も少なくなかったのですが、先達が上手くいっていないケースを見たり、それこそ先を走っている人たちからの「経験って意外に大事だよ」というアドバイスを受けたりして、少しずつ変化し始めているようです。

 ただ、ドンピシャの経験を見抜く方法論がなかなか見つからない。職務経歴書などを見て「この人は、これからのウチに必要な経験をしてきた人だから採用しよう」とアセスメントするわけですが、それだけでは不十分。さらに、そもそも「どんな経験を持っていたらいいのかそれ自体が未知数」なので経験者を採用したい、という状態なのに、この応募者はこういう経験があるからオッケーだと判断できるわけがない、というジレンマにも陥ってしまいます。絶対に外してはいけないポジションの人にもかかわらず「採用に失敗しました」という採用担当者からの告白を受ける回数が多いのも、この手の採用の特徴の一つでもあります。

 裏を返せば、自分のキャリアをきちんと棚卸しして、自分には何ができるのか、どんな能力があるのか、どんな仕事なら陣頭指揮がとれるレベルなのかという、いわゆる“経験の可視化”が、誰にでも理解し判断できるように準備ができている人なら「見つけてもらいやすい」という話でもあるのです。

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