ただ五輪決定後は、欧米メディアにそんな記事はあまり目立たなくなった。熱が冷めたてしまえばこのようなものだ。そんな中で敏感に反応を示していた人たちがいる。海外の原子力専門家たちだ。
米ウッズホール研究所のケン・ブースラーは「放射能汚染水を止める方法は現実的にない」と英BBCで発言している。
長年、世界の原子力政策に関わってきた大物専門家もこう言う。
「IOCが東京でオリンピックをやると決めた以上、現状をしっかりと伝え、日本は国内と世界の人々の信頼を得られるよう尽力しないといけない。コントロールできていると首相が言ったのに、すぐに東電ができていないという。国際社会は何を信じればいいのか。しっかりと事実を伝えないと、日本政府は福島の影に覆われて最終的にはオリンピック開催を諦めるという選択に迫られる可能性だって出てくるかもしれない」
さらに続けて言う。
「安倍は世界の前で汚染水の影響は原発周辺に限定されていると断言した。海に流れてどう食物連鎖に入り込むのかも把握されない汚染水を、誰がどうコントロールできるのか。これほどの量が海に流れ出たことは前例がない。安倍の発言はとんでもない誤解を招くものだ。被害を把握できない驚くほどの無能ぶりを露呈しただけか、はたまた、あからさまに世界の認識を操作しようとする試みだったのか」
こうした話は、海外でも引き続き大きく報じられていくことだろう。それが日本の原発事故対応にも緊張感をもたらすことになればよいのだが。
本記事は、九州情報サイト『メディア政経9』に掲載された記事を転載、編集したものです。
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