「じぇじぇじぇ」「倍返しだ!」――ドラマの決めゼリフがなぜ流行語に? 博報堂・吉川昌孝のデータで読み解く日本人(4/4 ページ)

» 2013年09月10日 00時00分 公開
[吉川昌孝,Business Media 誠]
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「社会の安定」が失われつつある今、みんなが乗れる物語が求められている

 下のグラフをご覧ください。

 これは20年間に渡って「欲しいもの」を聞いているのですが、大きくその数字を伸ばしたのは「安定した暮らし」だけです。それだけこの20年間で日本の社会は不安定になったというわけです。それと呼応するかのように「社会の安定」を日本の誇りとする人は減少しています。

 逆に、年金システムへの不安は、どんどん上昇し8割に達しようとしています。不安定な社会に不透明な未来。現実の中では希望が見出しにくい昨今です。戦後以来の大きな物語(大きな価値観や頼りにしていた社会システム)が揺れてはいるけど、とても自分一人では修復できそうもない。ましてや、自分一人でイチから作るなんてとんでもない。でも、なんとか安心はしたい。身近な、小さいけれど、普遍的な物語になら、何か関われるかもしれない。ネタにしたり、絵を描いたり……仲間との楽しい時間も増やせそうだ。そんな生活者の気持ちが、ドラマ発の決めゼリフを広めていったのではないでしょうか。

 「あまちゃん」は母娘の伝承を軸にした東京と地方の物語であり、「半沢直樹」は著者がおっしゃっているように「チャンバラ」の世界をほうふつとさせる勧善懲悪の物語。どちらもカタルシスを得るには十分な普遍性を持っています。こうした物語の持つ共感性の高さが、久しぶりにドラマ発の流行語を生んでいるのではないかと思います。

 どんなに小さな物語だとしても、物語の言葉だからこそ、みんなの明日の糧になる。私も最終回までは、希望と張り合いを持って暮らしていけそうです。でも、心配なのはドラマ終了後。心のやり場をどうしたらいいのでしょうか。

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