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この夏の参議院選挙から、日本でネット選挙運動が解禁になる。安倍晋三首相は6月26日、YouTubeにビデオをアップして、「ネット選挙は誰もが初めての体験です。皆で試行錯誤をしながら、日本の新しい政治の形を作り上げていきましょう」と語った。
ただ「ネット選挙」というのは正確には間違いだ。インターネットで投票が可能になるわけではないからだ。技術大国ニッポンがネット選挙を先導するならすばらしいが、今の日本では実現できそうにない。一方、世界ではインターネットを使って投票するネット選挙の議論があちこちで行われている。ちなみに世界で初めてインターネットを使った投票が行われたのは、2005年のエストニアだった。エストニアは「Skype」を生んだIT大国だ。
日本では、インターネットによる「選挙運動」が解禁になるに過ぎない。もちろんそれでも大きな進歩だが、ネットで選挙運動をするなんてのは世界では当たり前。ネットでキャンペーンをしてはいけないなんて、ほとんど聞いたことがない。日本の何年も前から行われてきた世界のネット選挙運動は、いったいどんな様子で行われているのか。
世界をリードしているのが米国であることは言うまでもない。ネットと選挙を語る上で欠かせないのが、2008年11月に行われた大統領選挙だ。無名の上院議員だったバラク・オバマが飛ぶ鳥を落とす勢いでネット上にムーブメントを起こし、見事に勝利をつかんだのは記憶に新しい。この選挙こそ、ネットが選挙そのもののあり方を変え、その後の世界におけるネット選挙運動の見本になっている。
その功績として一番大きいのは、若者をネットやSNS(ソーシャルネットワークサービス)で選挙運動に参加させたこと。コミュニティサイトを立ち上げ、支持者同士をつなげてボランティアでの選挙運動の入り口を提供したり、Q&Aサイトでオバマが全米の有権者の質問に答えるなど双方向性も高めた。直接的な関わりから多くの若者が全米で直接、選挙に関わっていくことで、その輪はどんどん広がっていった。
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