フランスもネット選挙運動が盛んだ。フランス人が初めてインターネット活動の影響力を自覚したのは、2005年のEU(欧州連合)憲法批准の是非についての住民投票だった。フランスのメディアは批准に賛成の立場で報道を続けたが、ネットでは反対論が盛り上がった。当時インターネットの普及率は45%ほどだったが、結局、批准は55%の反対で否決された。この否決に大きな影響を及ぼしたのが、ネットで反対票への投票を促す運動だったといわれている。
そしてその2年後に行われた大統領選挙では、ネット選挙運動が当たり前のように繰り広げられ、勝利したニコラ・サルコジは約9000万円をネット選挙運動に投じた。一方でネットを駆使して最有力対抗馬までになったセゴレーヌ・ロワイヤルは約1億1000万円をネットの選挙運動に投じている。
ただフランスでもいくつかの制限が設けられている。2006年には電子メールによる活動を禁じた。また、候補者や党が検索結果の上位に来るように工作するサーチエンジンの最適化は禁じられている。投票当日のネット選挙運動も禁止だが、市民がネット上で議論すること自体は取り締まりが非常に難しいために、結果的に許されている。ネガティブキャンペーンもおとがめはなし、ということになる。
これまで取り上げたような国々から大きく遅れてネット選挙運動を解禁した日本。ネット上では、すでに矛盾点などが指摘されている。電子メールはだめで、SNSメールはいいというのもそのひとつだ。ネット上のサービスや技術は日進月歩で、次々と新たな対策が必要になるため、規制や変更は続けられることになるだろう。
安倍首相がYouTubeで語ったように「試行錯誤」は、インターネットが存在する限りずっと続くことになる。
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