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» 2013年04月11日 08時00分 UPDATE

伊吹太歩の世界の歩き方:シンガポールの首相が中国を小馬鹿にした夜 (1/4)

日本人が未来都市のような観光地というイメージを抱くシンガポール。同国のリー首相が訪米で語った「中国批判」の裏には、シンガポールという国の真実が隠されていた。

[伊吹太歩,Business Media 誠]

著者プロフィール:伊吹太歩

世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材し、夕刊紙を中心に週刊誌や月刊誌などで活躍するライター。


伊吹太歩の世界の歩き方

 シンガポールのリー・シェンロン首相が2013年4月初旬に米国を訪問したが、リーにとってはとんだ訪米になってしまった。

 訪米の目的は、日本でも大きな議論になっている環太平洋連携協定(TPP)である。会談したリーと、バラク・オバマ米大統領は、両国がTPP交渉において年内の妥結を目指し、さらに連携を深めていく方針を確認した。

 シンガポールはTPP発足からの加盟国だ。自国に目立った一次産業がなく貿易で成り立ってきたシンガポールは、これまでも関税の緩和や、外資獲得のための積極的な税制緩和などを実施してきた(ただ最近では外国人が増えすぎたことで、逆に規制を強める傾向にある)。これまですでに「開放政策」を行ってきたことから、シンガポールにとっては実のところ、日本とは違いTPPから受ける影響はそれほどではない。

 それよりも今回、オバマがリーと協議したい問題は別にあった。今や米国の最大のライバルである、かの国について。そう中国だ。

 アジアに軸足を移す方針を進めるオバマは、シンガポールを味方につけることは極めて重要だと認識している。中国が海洋進出を活発化させるなか、安全保障における関係強化をアピールしたい思惑があったのだ。実際に、リーの訪米からすぐ後に、米海軍の原子力空母がシンガポールに寄港し、中国に対して、じわりとアジア太平洋地域での米国のプレゼンスを漂わせた。

 米国到着の翌日である4月2日、リーはオバマとの会談に臨んだ。会見後の共同会見でリーは中国問題に触れ、米中関係は「世界で最も重要な2国家関係だろう」と語り、「米国がアジアで生産性を持って関与する手助けをする」と付け加えた。

 ここまでは良かった。大事な会談が終わり、同じ日に開催された米商工会議所などが主催の夕食会に出席したリーは、とんだヘマをした。気が緩んだのか。はたまたテンションが上がってしまったのか。

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