シンガポールの首相が中国を小馬鹿にした夜伊吹太歩の世界の歩き方(2/4 ページ)

» 2013年04月11日 08時00分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]

中国をコケにするジョークを連発

 ワシントンで行われた夕食会にはビジネス界から約300人の人たちが招待されていた。そして壇上に立ったリーは、中国をコケにするような発言をしたのだ。

 「北京の人たちは窓を開けたら、それだけでタダでたばこが吸えると冗談を言っているらしい!(笑)」

 この冗談には中国人に対するリーの「ステレオタイプ的な蔑み」が言外に含まれている。リーの訪米後に電子メールでやり取りした台湾在住のシンガポール人編集者は、「リー・シェンロンが言わんとしているのはこういうことだ。中国人は他人のことを考えないので汚染もやりたい放題。米国のエリート層なら吸わないたばこを、中国人はヘビーに吸う。さらに中国人はカネにめざとく無料が大好き……そんな嫌味がジョークの裏にあるのではないか」と指摘した。

 一国の首相がこんな発言をすると、うがった見方をされることはしょうがない。ただ夕食会とはいえ、こうした発言は不適切で、まさに失言だ。もっと違ったジョークを選ぶべきだった。

 ただそんな冗談でも、会場の笑いを誘った。するとリーは、また別の冗談を飛ばした。大気汚染ジョークによる笑いで暖まった会場に気分を良くしたのか、続けてこう発言した。

 「上海でもし豚のスープを食したければ、蛇口をひねればいいだけだ」

 リーは、3月初頭に上海市内を流れる黄浦江で豚の死骸が大量に発見されたことをネタにした。ちなみに黄浦江は周辺住民の飲み水として水源になっていた。

 夕食会に招待された米国のビジネスマンたちも、さすがにこのジョークは笑えなかったようだ。そもそも「夕食会」である。その様子にリーはすぐにフォローを入れた。「彼ら(中国人)がそう冗談を言ってるんですよ、私が考えたんじゃないですから!」

 この一連の失言がすぐにニュースとして配信されたことは言うまでもない。もちろん中国当局の耳にも届いたはずだ。

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