レーダー照射はあるけど……公明党山口代表「8月12日を目標に日中首脳会談を実現したい」(4/4 ページ)

» 2013年02月08日 11時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
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日中平和友好条約の精神と中国の姿勢の矛盾

――中国艦艇によるレーダー照射が1月19日と30日にあったということですが、この緊張情勢をどのように見ていますか。代表はその事実を把握した上での訪中だったのでしょうか。また、再度の訪中の予定はありますか。

山口 レーダー照射の件については、防衛省あるいは政府内で、熟慮して自制を求める、冷静に対応すると(発表しています)。事前に中国側にも抗議の意思を伝えた上で公表するという経過をたどっていると思います。1月19日と30日の件は説明の仕方も言葉も違っています。そういう慎重な発表になっていることから、どういう対応を政府が考慮してきたかということは類推できると思いますので、それ以上のことは私は申し上げません。

 いずれにしてもこういう事態が今後起きないように努力していくことが大事なので、双方の仕組みを作っていくということを今後進めていくべきだと思います。今後必要があれば、いつとは申し上げませんが、いつでも対話の扉はオープンになっているというのが安倍首相と私の共通認識なので、必要に応じて(訪中を)考える時も来るかもしれません。

――日中平和友好条約の武力による威嚇は行わない、あるいは覇権は求めないというところが中心であるという習総書記のお話はその通りだと思うのですが、今回のレーダー照射や最近の中国の海軍力の強化を日本側から見ると、武力による威嚇、あるいは覇権を求めているという印象を受けざるを得ません。今回の事態は習総書記の発言に照らすと、どういう風に解釈したらいいのでしょうか。

山口 私も法律家の端くれなので国際法的に、法的にどう見られるべきかという見解は持っていますが、あえてそれを述べてそれが正しいかどうかという議論を起こすよりも、やはりもっと大きな意味でこの軍事力が増大し、それが接近し合うということはストレスが伴うので、それが両国の国民から見て、あるいは国際社会から見て、どう映るかということを冷静に慎重に配慮しなければならないと思います。それに極めて近付いた行いというのは遠ざける、避ける、回避する努力をし合わなければならないと思います。

 例えば、船の問題ではすでに日本はロシアなどとも一定のルールを作りながら、回避する経験を積んできました。こういった国際ルールの標準を参考にしながら、日中間でもそういったストレスを避ける努力も現実の問題として必要だと思っています。そして、武力の威嚇や行使と国際社会や両国の国民から受け取られないようにする対応も重要だと思います。

 前回、2010年に訪中した時、習氏の印象に残る言葉として2点感じました。1つは中国の総人口は先進各国の総人口に匹敵するということ。同じ経済発展の道をたどると、地球の資源や環境に大きな負荷がかかるので、先進国のたどった経済モデルとは違うモデルに転換しなければならない。環境その他で日本の協力を求めたい、という発言が印象に残っています。そしてもう1つ、中国は絶対に覇権を求めないということも述べられました。今回、4つの政治文書が重要だと強調されたのも、一貫した習総書記の姿勢を感じるので、それを文字通り、実行していくことを期待したいと思います。

――2回目のレーダー照射と人民日報に講話が発表されたのは同じ1月30日ですが、その関係についてどうお考えですか。

山口 それがどのような関係にあるかということは、我々に知るすべはありません。中国側の今回の日本の対応についてのコメントは、まだ明確ではないと思います。いずれにしても今回の我々の訪中の会談によって対話の扉が開かれた、大きな流れができるきっかけができた。その雰囲気を損なうことのないような賢明な冷静な対応が両方に求められると思います。日本側としては、極めて慎重に冷静に対応しているというのが安倍首相の姿勢かと思っています。

――集団的自衛権についての考え方を教えてください。また、日米首脳会談で議題にする予定はありますか。

山口 集団的自衛権についてのわが党の考え方は基本的に変わりません。集団的自衛権を持つことは認められているけど、これを使うことは憲法上許されないというのが政府が一環としてとってきた考え方なので、我々もそれを支持するというのが公明党の姿勢です。

 しかし、安倍さんはこれを使うことも認めるべきであるという考え方を打ち出されました。しかし、どういう風にそれを国民に理解してもらい、政府の考え方にするかという道筋はまだ示されていませんし、合意もできていません。こういう大きな憲法の解釈の変更、あるいは憲法の改正というのは簡単にはできないことだと思っています。

 一方で、この行使を認めるということは、日本の領土、領空、領海で武力を使うということが今まで個別的自衛権の行使と説明されてきましたから、集団的自衛権の行使を認めるということは領域の外で武力を使う道を開くことになってきます。そうすると、日本の国民も心配しますし、近隣諸国も心配する原因になるので、外交上のさまざまな影響も考えながら慎重に対応すべきという意見が国内にもまた米国側にもあるかなと思います。今度の日米首脳会談でテーマになるのかどうか、テーマにするのかどうかは定かではありませんが、安倍首相はさまざまな観点から検討していくと思います。

 いずれにしてもすぐにやろうという姿勢ではないことだけは確かで、安倍首相は専門家の議論にまず委ねて、そのレポートを待って、その後、考えていくという姿勢のように思います。

――自民党と公明党の意見の違いについてどうお考えですか。

山口 お互いの基本的な考え方は相互に理解しているので、むしろ今後どういう議論をするのか、また国民がどう受け止めるのかというところは慎重に与党として対応を考えるということもあるかもしれません。いずれにしても事を急いで、政権の安定感を損なうことは避けようというのが両党共通の認識だと思います。

――今回の訪中について、終わった後に創価学会の最高実力者(池田大作名誉会長)には報告されたのでしょうか。報告されたとしたら、どのような評価があったのでしょうか。

山口 創価学会の指導者からの伝言も預かりましたし、それをお伝えしました。また、会談の冒頭でテレビカメラの前で習総書記からも言及がありました。ですから、おのずと伝わっている部分もあるでしょうし、きちんとしかるべきルートでお伝えもしました。

――領土問題などは欧州でも多く起こっていますが、そうしたものは参考になりますか。

山口 事実として国交回復当時、周恩来首相は尖閣の問題は課題にしなくていい、国交回復の方が極めて大きな目的だという言及をされました。この問題をクリアにすることもさることながら、むしろ相互に利益につながる、また地域の安定や発展につながることを優先する価値判断というのは歴史上あったと思います。

 欧州で長年積み重ねられた努力も大いに参考にしながら、この局面がアジアでは複雑な面もありますが、しかしもっと大きな国際社会の流れやその両国の国民が今直面する課題、利益を具体的に解決することの方を優先すべきだと我々は思っています。

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