レーダー照射はあるけど……公明党山口代表「8月12日を目標に日中首脳会談を実現したい」(1/4 ページ)

» 2013年02月08日 11時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 尖閣諸島の国有化などをきっかけに、冷え込んでいる日中関係。そうした中で関係改善を図るために、与党公明党の山口那津男代表が習近平総書記と1月25日に会談。首脳会談を含むハイレベルの対話が重要であるという認識を共有した。

 足元では中国艦艇による海上自衛隊護衛艦へのレーダー照射が問題となっているが、今後の日中関係はどうあるべきなのか。2月7日に日本外国特派員協会で行った講演で、山口代表は「不測の事態を回避して、大局的な関係に進んでいくことが両国の政治指導者の大きな責務」と述べ、日中平和友好条約締結35周年にあたる8月12日を目標とした日中首脳会談の可能性についても言及した。

公明党の山口那津男代表

不測の事態を回避して、大局的な関係に進んでいくことが大事

山口 このたび訪中させていただきましたが、この機会を得ようと思い始めたのは2012年夏以降、前政権が尖閣諸島の所有権を国が取得して、その後、急速に関係が悪化していたからです。「これは何とかしなければならない」ということが当初の思いです。

 そして、早期の解散を求めてきました。それは近隣国、特に中国では習近平氏が総書記に選ばれて体制が変わり、韓国でも大統領選が行われ、米国でも大統領選が行われ、主要な隣国が次々と政治体制を新しくしているからです。そういう中で、日米、日中、日韓、日ロ関係に少しきしみが生じていました。これを立て直すためには、我が国も選挙を行って新しい民意を得て、関係改善に進む必要があると強く感じていたからです。

 中国との政治的な対話が途絶えて、現場では島(尖閣諸島)をめぐって緊張がどんどん高まると。不測の事態すら起こりかねない、そういう状況が日に日に進んでいったわけです。私は野田民主党政権に対して「早く解散すべし」と党首討論でも再三迫りましたが、なかなか解散しませんでした。ようやく12月に至って解散総選挙になって、政権が変わることとなったわけです。「チャンス到来」と思いました。

 連立政権を自民党と公明党で作ることになりましたが、その連立政権の合意を結ぶ時点で、総理大臣になる前の当時の安倍晋三自民党総裁に「次の通常国会が始まる前に訪中した方がいいと思う。公明党として訪中したい」と言うと、安倍総裁から「ぜひ行っていただきたい」という話になりました。

 さまざまなルートで訪中の機会を探ってきましたが、国会の始まる直前、1月22〜25日訪中という連絡がきて、安倍首相と相談して、習総書記に対する安倍首相の親書をお預かりしました。

 本来は安倍首相が首脳会談を早く開く必要があるわけですが、首相という立場なので、その機会はすぐには難しいわけです。また、自民党も総裁選挙でさまざまな主張があったので、自民党として訪中の機会を得るのはすぐにはなかなか難しいという事情もあったかもしれません。そういう中で、日中国交回復当時に一定の役割を果たし、日中間での友好的な関係を長年継続していた公明党が、訪中の役割を果たすということはお互いに理解し合っていたことです。

 このタイミングでの訪中を選んだのには、2つの主な理由があります。1つは、政治対話が途絶えていることです。中国の外交部と日本の外務省という外交当局の対話だけでは、事態は開くことはできません。特に中国の場合は、政府部門より中国共産党の指導制がより上にあります。そのため、政治家と意思疎通できなければ、事態は開けないということで政治対話の必要性を強く感じていたことが1つです。

 そして、日中双方の政治日程を考えると、日本では国会が開会されると初めての連立与党の国会で補正予算、本予算と連続的に早期成立を図らないといけません。政治力が集中する時期になるわけです。また、連休(ゴールデンウイーク)前に予算成立という目標で進んでいますが、その後、参議院議員選挙が夏に予定されているので、ここでも政治日程がきつくなります。また、中国側は春節(旧暦の正月で2月10日)で一定期間の休暇があり、また3月には全国人民代表大会が開かれて、そこで政府の体制が確定していきます。そういった政治日程を考えると、政治対話の空白が長く続く恐れがあるので、1月の国会開会前に政治対話の扉を開く必要があったのです。

 習総書記との会談はなかなかセットされませんでしたが、最終日に実現できました。その冒頭で親書をお渡しし、習総書記からは「第一次安倍政権の時(2006年9月26日〜2007年9月26日)、安倍首相は日中関係の改善に役割を果たした。そこを高く評価する」というコメントが出されました。

 我々からは「日中間に意見の違う1つの懸案があったとしても、経済関係を始めとする全体の大きな関係に影響を与えるべきではない。日中の共通の利益をどう拡大させるか。この本来の筋を発展させるべきである。そのためには政治対話の扉を開いて、対話を重ねて、首脳会談に至る必要があると考える」と提案しました。

 習総書記からはこの我々の提案を受けて、「ハイレベルの政治対話、交流は重要である。我々も真剣に検討する。そしてそれに至るように、交流が進むように積極的な雰囲気を作る必要がある」という答えがありました。

 双方、意見の違いがあったとしても、対話によって事態を良い方向に向けていくというきっかけが作られたと我々は認識しています。これを機会に今後、対話を重ねて、首脳会談の時期を模索したいと思っています。帰ってから安倍首相に報告すると同時に、国会の代表質問でもこの点を安倍首相に問いました。安倍首相からは「中国と戦略的互恵関係を築いた原点に立ち戻って、今後この関係を推進していく必要がある。このたびの訪中は有意義であった」という答弁がありました。

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