国内初のデジタル輪転機、なぜ講談社は導入したのか(1/4 ページ)

» 2013年01月29日 12時47分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 講談社は1月28日、インクジェット式のデジタル輪転機(HP T300 Color Inkjet Web Press/日本ヒューレット・パッカード製)を導入すると発表した。国内第1号となるこの輪転機はデジタルデータを使用しているので、オフセット印刷で必要な版の作成が不要になる。出版物に合わせて必要な部数を生産できるようになるというが、なぜ同社はこのようなシステムを導入したのか。講談社の梅崎健次郎局長(業務局)が記者会見で語った内容を、一問一答形式でまとめた。

小ロット化を実現するフルデジタル書籍生産システム

出版市場は縮小している

――日本の出版流通はどのように流れているのか?

梅崎:昔からあるのは「出版社」→「取次会社」→「書店」→「読者」という流れ。売れ残った本について「書店」は「取次会社」に仕入れ価格で買い取ってもらう。そして「取次会社」は「出版社」に買い取ってもらう。

 10年くらい前まではこうした流れが一般的だったが、「古書店」の存在が大きくなり、その影響を受けて市場が縮小してしまった。なんとか売り上げを増やそうとして、「書店」の中には「古書店」を運営するところも出てきた。読者に販売した本を買い取って、再び読者に売る。またネットの普及によって、新刊と一緒に古本を販売する動きが出てきた。さらに「出版社」が「取次会社」を通さずに、「書店」に直接売るルートもできつつある。

 こうしたさまざまな動きが出てくる中で、「出版社」から「書店」に販売するのは1万〜2万部ではなく、2000〜3000部とこれまでにはなかった部数で本をつくらなければならなくなった。

――市場が縮小しているということだが、どのくらい縮小しているのか?

梅崎:1995年から2011年までの書籍発行点数をみると、95年から右肩上がりで伸びている。年によっては減少していることもあるが、傾向としては伸びている。ジャンル別でみても、単行本、文庫本、新書本――いずれも伸びている。

 一方で、書籍の発行金額はどうなのか。点数はどんどん伸びているが、金額は右肩下がりで減っている。

 「取次会社」から「出版社」への返品率を見ると、2007年から40%前後で推移している。しかし2011年は35.6%に減った。なぜ減ったかというと返品率が高いままだと「取次会社」も利益を得ることが難しくなるので、入荷制限を行ったのだ。

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