国内初のデジタル輪転機、なぜ講談社は導入したのか(3/4 ページ)

» 2013年01月29日 12時47分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

新システムに期待すること

――新システムを導入して、どのような効果を期待しているのか?

梅崎:小ロットの重版が可能になることが大きい。オフセットの場合、印刷を始める前に紙の予備が必要になるので、コスト増の要因になっていた。また在庫コストも減少するだろう。本をつくる場合、2年間で売り切ることを想定する。例えば2000部の本を想定すると、毎月80部、年間1000部×2年といった感じ。ただ売れ行きが止まってしまうと、在庫コストが膨らんでいく。また廃棄しなければいけなくなる。

 コストはどのくらい削減される? 具体的な数字を申し上げることはできない。ただオフセットで1600部つくっていた本を、300部、400部といった部数でも同じコストでつくれるようになった。

――なぜ自社で導入しようと思ったのか?

梅崎:最も大きな理由は、印刷会社が導入する見込みがなかったから。デジタル輪転機でつくった本とオフセットでつくった本を見比べると、その違いに気付く人はほとんどいない。しかしよく見ると、違う。

 豪華な本――例えば美術関連の本については品質を求めるが、文庫本のようなタイプはデジタル輪転機でつくってもいいのではないか。ただ印刷会社としては受注したモノについては、同じ基準で仕上げなければいけない、という思いがあるだろう。そのギャップを埋めることができないと判断したからだ。

インクジェットデジタル輪転印刷機。PDFデータも簡単に製本され、1冊本に仕上がる(左)。「プリンティング」の工程で、ここで表面または裏面を印刷している(左)

このタンクの中にインクが入っている(右)。インクは工場内の壁や天井をつたって機械に流れていく(左)

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