日本銀行が金融拡張にいかに不熱心であるか、次の4つのグラフをお見せして話を終えたいと思います。日本銀行が左右できるベースマネー※の動きを見ると、英国や米国は大盤振る舞いをして、欧州ですら随分拡張しているのに、日本だけが拡張しませんでした。
そうすると、りんご(=ドルなど)とみかん(=円)があった時に、りんごだけ増産されたようになるので、円は当然高くなります。もちろんレートだけでなく、「日本は安全だ」ということで集まってくる効果もあるので、ソロスが言ったように金融政策だけで為替レートは決まっていないようなのですが。
そういうことで日本だけ、リーマンショックの始まりごろは1ドル110円ほどだったのですが、そこから20〜30%も高くなっています。一方、韓国などはドルに対して逆に安くなっています。だから全体とすると、韓国企業と競争しようとすると60〜70%のハードル(為替レートの差)をクリアしないといけません。それにはいくら技術が進歩して、能率化しても限度があるわけです。ですから、エルピーダメモリは破産してしまいました。「日本銀行がエルピーダをつぶした」と言ってもいいと思います。
エルピーダメモリは国策会社なので、これがいいことかどうかは分かりませんが産業政策は100%やったわけです。私は必ずしも産業政策を推奨するわけではありませんので、そういう意味では今の成長基盤の強化という内閣の方針、「介入して良くしよう」というのは間違いだと思います。むしろ竹中さんの言うように構造改革で能率を良くしていく方がいいんだろうと思います。
そういうことは別として、エルピーダメモリという独占会社を作ったのですが、60〜70%の(為替のハンデが付いた)競争は勝ち抜けなかったということです。こういうことで鉱工業生産を見ると、日本だけ大きく落ちています。
つまり、日本の国内生産の落ち込みというのはエルピーダメモリだけではなくて、サブプライムショックが起こった国よりもずっと大きかったんです。それは金融政策をサボって、緊急の救済措置をやらなかったからだということになると思います。図には出しませんでしたが、中興国や発展途上国、アジアのライジングスターに比べれば日本の成長率が低いのはやむをえませんが、先進国と比べても日本の実質成長率は極めて小さかったです。それは金融政策の無策が、需要にきいていたからだと思います。
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