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» 2012年12月19日 12時00分 UPDATE

“遊技機”から“メディア”へ、『ぱちんこAKB48』が示した可能性 (1/5)

人気コンテンツの版権者に版権料を払って、機種を開発しているパチンコ・パチスロ産業。しかし今、版権を単に使うというだけでなく、新曲発表のメディアとして使われた『ぱちんこAKB48』に代表されるように、単なる“遊技機”から“メディア”としての役割も持つようになっているという。

[堀内彰宏,Business Media 誠]

 数あるエンタテインメント産業の中でも、市場規模が約20兆円と非常に大きいパチンコやパチスロ。多くの人が楽しんでいる一方、射幸心をあおったり、不透明な資金の流れが指摘されるという悪いイメージもある。

 技術の進歩とともにその形を変えてきたパチンコだが、液晶画面の導入によって、アニメやゲーム関連企業も開発に加わり、多くのヒット作品も生まれるようになった。その版権料がアニメ新作の資金源となったり、パチンコとコラボすることでプロモーションに役立てたりする例も増えている。

 そんな現代のパチンコ産業の先端研究者であるのが、エンタテインメントビジネス総合研究所の藤田宏社長だ。同氏はアクセンチュアでのコンサルティングを経て同研究所に移籍し、パチンコ業界の調査・コンサルティング・人材育成業務に携わっている。11月28日にデジタルハリウッド大学で行われた公開授業で、藤田氏は“遊技機”から“メディア”へと変わりつつあるパチンコ業界の現状を解説した。

ah_huzita1.jpg エンタテインメントビジネス総合研究所の藤田宏社長

市場規模はスーパー業界とほぼ同じ

藤田 今日は「メディアとしてのパチンコ」「ビジネスとしてのパチンコ開発」「今、人気の『ぱちんこAKB48』がもたらした可能性」という3つを中心にお話しします。

 まずパチンコ業界の市場規模はどのくらいか。自動車業界が44兆円、スーパー業界が19兆円、携帯電話業界が10兆円、アパレル業界が4兆円と言われていますが、パチンコ業界ではスーパー業界とほぼ同じ19〜20兆円という大きな金額が動いています。レジャー白書によると余暇市場は約70兆円ですが、スポーツや趣味、観光などさまざまある中で、パチンコ市場は20兆円を占めているというわけです。

ah_huzita100.jpg 余暇市場の規模(出典:FIELDS)

 参加人口はどのくらいか。パチンコは18歳以上になると遊べるのですが、18歳以上人口の約1億人の6人に1人にあたる約1700万人が遊んでいます。一部の最近のデータではもっと少なくなったと出ていますが、弊社が行っている調査ではだいたいこのくらいになっています。店舗数は全国に1万2000店舗で、全国津々浦々の都市にあります。パチンコ台の総設置台数は約450万台です。

ah_huzita101.jpg (出典:FIELDS)

 そして、それは単に規模が大きいというだけではありません。今、メディアとしてのパワーも非常に大きくなっています。パチンコで遊ばない人でも、パチンコ店の店頭、ポスター、のぼり、デジタルサイネージ、交通広告、新聞の折り込み広告、テレビCM、ラジオCMなどに触れるでしょう。首都圏に住んでいる人はあまり感じないかもしれないですが、東京キー局以外の地方局ではパチンコ系のCMが多く入っています。今、テレビCMが少なくなっているので、テレビ局にとってパチンコ系のCMは大きな収益源になっているのです。

 そういうことで、パチンコで遊ばない人との接点も多いということが、今のパチンコビジネスの特徴です。結果として、パチンコで取り上げられたコンテンツやさまざまな出来事がパチンコ以外に派生してヒットにつながったり、あるいはそれを意図して仕掛けている例も数多く出てきてます。

 例えば、『海物語』というパチンコ機種のマリンちゃんというオリジナルキャラクターが、今、パチンコ以外でも使われるようになってきています。また、若い人はテレビドラマ『必殺仕事人』(1979〜1981年)を見たことがないと思いますが、パチンコ機種になって多く露出したことによって、知っている人も増えてきた感じです。このように、気付かない間にパチンコ関係のキャラクターが数多く世の中に出ています。

 先ほどパチンコの市場規模に触れましたが、パチンコ店では新台入れ替えをどのくらい行っているのか。大まかにですが、パチンコ店は1年で設置している台を全部替えるくらい行っています。全国にパチンコ台は450万台設置されているのですが、年間500万台は新台が投入されているということです。新台価格は約40万円なので、非常に荒っぽい計算ですが年間で2兆円の新台購入費が使われていることになります。

 パチンコ台の液晶画面で多くのコンテンツが使われていると言いましたが、このきっかけは1998年の『CRルパン三世 World is mine』だと私は見ています。オリジナルのマンガは1960年代に連載が始まったのですが、テレビアニメになったのが1970年代、そして1990年代後半にパチンコ機種が出たということです。

 非常に画期的な試みでした。こういう版権をどう使っていいのかというルールが業界になかったので、版権者は大変だったと聞いています。というのも、パチンコ店としては「新台が出ました」と宣伝したいのですが、その際、当然、ルパン三世がからむ広告にしたい。そのため、当時は権利という概念があまりなかったので、ルパン三世のマンガを勝手にコピーしたり、アニメの動画をコピーして勝手に使ったりと、明らかに著作権法に違反しているものがたくさん出てしまったのです。そこで、あわててメーカーと版権者が協議して、「これは使っていい」「これは使ってはダメ」と急きょ決めたりしたということです。

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