さらにここで私は、対照的な2つの思考に特別な名付けをしたい。1つは「具象×論理×客観」領域を基地とする思考を『キレの思考』と名付ける。これは、典型的にはサイエンスの人々が行っているものと考えれば分かりやすいだろう。そしてもう1つは、「抽象×イメージ×主観」領域を基地とする思考を『コクの思考』と名付ける。これは、典型的にはアートの人々が行っているものである。
「キレ・コク」は、ご存じのように、ビールやコーヒーなどの味を評価する言葉としてよく用いられる。「キレ(切れ)」は、辛いや酸っぱいなど舌の上での刺激が明瞭で、その後、すっと味が消えていくことをいう。他方、「コク」は、複雑に入り混じった味が余韻をもって舌やのど、口内にとどまることを言う。
私は、思考にも「キレ」と「コク」という性質の転用が可能だと思う。「キレの思考」と「コクの思考」の特徴をまとめると次のようになる。
- 「具象×論理×客観」領域を基地とする思考活動
- 「シャープ&ソリッド」な思考(sharp=鋭い・明快な、solid=固形の・硬い・実線の)
- 具象性に根付きながら明示するように考える
- tangible(触れられる)、explicit(系統立てられた)、
- 不確実性や曖昧さを排除する
- 実践や実利を求める
- 客観的事実を積み上げていく
- 物事を細かに分解し調べて理解しようとする(還元論的)
- 分析的、収束的
- 直線的に、連続的に
- 「理知の人」、事象を測量し証明する
- 形態(form)寄り
- その思考をする者の能力に関わる
- 「抽象×イメージ×S」領域を基地とする思考活動
- 「リッチ&ファジィ」な思考(rich=豊かな・濃厚な・味わいのある、fuzzy=曖昧な・不明瞭な)
- 抽象的に、輪郭を描かず、示唆化するように考える
- intangible(触れられない)、tacit(暗黙の)
- 不確実性やあいまいさを受け入れる
- 観念的でよしとする
- 主観的解釈で仮説を立てる
- 物事をまるごと包み込んでとらえようとする(全体論的)
- 綜合的、拡張的
- 非直線的に、非連続的に
- 「智慧の人」、意味・価値を物語る
- 本質(essence)寄り
- その思考をする者の存在に関わる
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