第3回WBCを辞退したイチロー、天才打者はどこを目指すのか?臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(2/4 ページ)

» 2012年11月21日 08時00分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]

日ごろから体のメンテナンスを怠らないイチロー

 イチローの素晴らしさは打撃、守備、走塁のレベルがすべてにおいて優れていること。これはいまさらいうまでもないことだが、それに加えて特筆すべきは毎年ほとんどフル出場する体の強さ、スタミナにある。それは日ごろから体のケアをしっかりときめ細かくやっていることに他ならない。

 ヤンキースに移籍した直後の2012年8月上旬。本拠地ヤンキースタジアムで行われる試合直前の話だ。ロッカールームで他の選手が試合の準備をしている中、地元メディアの記者たちが探してもイチローの姿がどこにも見当たらない。「おかしいな」と思って一同が探し回ると、当人はトレーニングルームの真ん中で両足を大きく広げながらストレッチをしていた。その後、スリコギ棒のようなもので足の土踏まずを3分近くに渡ってグーッと一押し。試合中に疲れがたまって土踏まずに張りが出てくるので、その予防対策をしていたのだ。

 それだけではない。イチローは試合後、自宅や遠征先の宿舎に帰ると自分の部屋で30分から1時間近くにわたって行う柔軟体操や、プッシュアップや腹筋などの筋力トレーニングで必ず汗を流している。「これはマリナーズ時代からのルーティーン。ナイターでどんなに試合終了が遅くなっても欠かしたことはない」というから恐れ入る。

 オリックス時代に比べ、イチローは太ももと尻が、明らかにひと回り大きくなった。日ごろから体力のアップを図るとともに、こうしたケガをしない体つくりに励んでいるからこそ群雄割拠のメジャーリーグでトップレベルのプレーをキープできるのだ。実際、メジャー12年間で故障者リストに入ったのは2009年開幕時の1度のみ。毎年平均で162試合に出場し、ここまでほとんど休んでいない。

 メジャーリーグは試合数が多く、遠征の移動距離も長い。日本と比較して26倍も国土が広い米国には時差も当然ある。2ケタ連戦だって珍しくない。そんな過酷な条件下でほとんどのベテラン選手は「休養」を申し出るのが慣例化されている中、イチローは毎年当たり前のようにほぼフル稼働している。ちなみに今季もマリナーズ、7月末に移籍したヤンキースと合わせて162試合に出場した。

 「長い間、メジャーリーグでプレーしているが、イチローのようなストイックなプレーヤーは初めて見たよ。常に自分を追い込み、絶対に妥協することがない。彼は間違いなく歴史に残るプロフェッショナルであり、これからもわれわれを驚かせていくだろうね」とは、あのヤンキースのスーパースター、デレク・ジーターのコメントだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.