米国アニメ産業はアウトソーシングで空洞化したかアニメビジネスの今・アニメ空洞化論その2(2/3 ページ)

» 2012年10月24日 08時00分 公開
[増田弘道,Business Media 誠]

1990年代以降、盛り上がったハリウッドアニメーション

 次表は1990年以降の米国映画興行収入に占めるアニメーション映画の割合を示しているが、その比率は確実に高まっている。

北米興行収入全体に対するアニメーション興行収入の割合(単位:1000ドル、BOXOFFICE MOJOより筆者作成)

 グラフの左端の1990年はまだディズニーアニメーションが復活する前の時期なので、興行収入に占める割合は非常に低い。その後、ディズニー中興の祖たちによって『美女と野獣』『アラジン』『ライオン・キング』といった名作が作られて大復活を遂げ、その後ピクサーが挑戦したCGアニメーション『トイ・ストーリー』が大成功し、現在では年間10作品以上の劇場アニメーションが製作されるようになった。

 1990年代には年間せいぜい2〜3作品だったので数倍に増えたのだが、そんな急激な増産に対応してスタッフを増員できたわけでもなく、海外に大量のアウトソーシングを行っていた。しかし、そうした状況にありながらハリウッドのアニメーションが空洞化したとかレベルが下がったという話は聞かない。逆にCGアニメーションに関しては断トツのクオリティで競争力が増し、ほぼ市場を独占している状況である。

日本に見るアウトソーシングのケーススタディ

 振り返って日本の場合はどうか。日本でアウトソーシングが始まったのは1970年代の東映アニメーションというのが通説となっている。そのきっかけは米国との「合作」体験を踏まえてのことだろうが、現在では韓国や中国、フィリピンまで広がっており、アニメの制作工程に欠かせない存在となっている。

 そもそもアウトソーシングは、日本の自動車産業やユニクロ、米国のAppleなども普通に行っているシステム。特にAppleなどは自社工場を持たず、製造工程のほとんどが海外へのアウトソーシングで成り立っており、本体の役割は企画・研究・開発・マーケティング・販売を中心としたものである。

 アニメの場合は作業内容の違いはあるが、高付加価値なものを内部に抱えるという意味では同じである。iPhone 5には約1000個の電子部品が使われているそうだが、そのうちの50%以上が日本製だという。だからと言って、日本がiPhoneを発想・企画できるかといえば話は別だ。

 同様にアニメでも作業工程がアウトソーシングされ、技術が伝わっても、同じように面白いものを制作できるかどうかは別問題である。本質は作品の根本にあるクリエイティビティにあり、先に述べた「企画」「原作」「脚本」「演出」「絵コンテ」「レイアウト」「原画」「音響」といった高付加価値な工程を自家薬籠中の物としない限り二番煎じ、コピーに終わってしまうのである。

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