5年ぶりに制作分数が増加、レポートから見るアニメ業界の現状アニメビジネスの今(1/5 ページ)

» 2012年09月25日 08時00分 公開
[増田弘道,Business Media 誠]

アニメビジネスの今

今や老若男女を問わず、愛されるようになったアニメーション。「日本のアニメーションは世界にも受け入れられている」と言われることもあるが、ビジネスとして健全な成功を収められている作品は決して多くない。この連載では現在のアニメビジネスについてデータをもとに分析し、持続可能なあるべき姿を探っていく。


 遅ればせながら、2011年のアニメ産業界の数値がようやく確定した。これは筆者が座長を務めている日本動画協会データベースワーキングで毎年発刊している「アニメ産業レポート」からのものであるが、公知のデータのほか、アンケートによってアニメ製作・制作を行っている元請企業からの直接情報を得て作っている。

 今回はこの「アニメ産業レポート2012」のデータから見えてくるアニメ業界の情勢について言及してみたい。

東日本大震災にもかかわらず回復した業績

 アニメ産業界に関わらず、2011年最大のトピックスは何と言っても東北で起きた大震災であった。1000年に1度と言われるほど未曾有の規模で、アニメ業界でも施設そのものに対する被害はそれほどではなかったものの、テレビ放映のキャンセルやスケジュール遅延などの事態に見舞われた。先行きに大きな不安を抱かせたのは確かだったが、産業レポートでの報告にもあるように、結果的にはアニメ産業に与える影響は軽重であったことは誠に幸いであったと言えよう。

 そして、リーマンショック以降の厳しい経済環境の後に続いた大震災といった状況下にも関わらず、非常に心強く思えたのは2007年以来下がり続けていたアニメ産業の数字が回復基調に入ったことである。それは、次項のテレビアニメ放映分数やアニメ業界・産業の数値で確認できるが、2012年もその基調が続くなら完全に回復したと言い切れるだろう。アニメ産業の地力はまだまだ充分あるようだ。

 テレビアニメの国日本で景気動向の目安となるのがテレビアニメの放映分数である。もちろん、ヒット作品の数やそのレベルによって動向が左右されることはあるが、そもそも制作分数が増えるということ自体、人気作品が生まれていることの証左であると考えられるので、基本はこの制作分数の多寡がその年のアニメ業界の基本的な経済的トレンドを表しているとみていいだろう。

 次図はアニメ産業レポートで毎年発表している日本のテレビアニメ制作分数だが、2006年をピークに4年連続で下がり続けてきた。それが2011年にようやく回復の気配を見せ前年比5.1%増となる9万5098分となった。テレビアニメの制作分数は制作予算に直結しているので、業界にとって非常に大きな意味を持っている。従って、制作分数の回復は2011年の大きなトピックであった。

テレビアニメの制作分数推移(単位:分、日本動画協会発表資料)
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