フローズン〈生〉をヒットさせた、キリンビールの戦略(1/3 ページ)

» 2012年09月20日 19時20分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 2012年の夏、最も注目されたビールといえば、キリンビールが発売した「一番搾り フローズン〈生〉」だろう。ソフトクリームを想像させるシャリシャリの泡を“食べて”、「これがビールの泡?」と驚いた人も多いのではないだろうか。

 若者のビール離れが叫ばれる中、SNS上でも注目された「フローズン〈生〉」はどのようにして開発されたのだろうか。またヒットの要因などを、マーケティング部の門田邦彦さんに話を聞いた。

※本記事は、9月20日に行われた新商品の発表会での発言をまとめたものです。

開発の背景

――フローズン〈生〉が開発された背景を教えていただけますでしょうか?

門田:ビール市場は1995年をピークに減少傾向にあります。20〜30代のライフスタイルに溶け込むようなビールを、私たちは開発できていなかったのでしょう。チューハイやハイボールなどの新商品がたくさん出てきましたが、ビールはその中のひとつになってしまいました。昔のように「とりあえずビール」という人が減ってきている中で、私たちは新しいビールを提案できていませんでした。

 こうした背景があって、既存の枠にとらわれず、「本当にビールっていいよなあ」と思ってもらえるような“生ビールの現代化”を目指しました。

 また開発にあたって、コーヒー業界の事例を参考にさせていただきました。昔のサラリーマンは喫茶店でコーヒーを飲む人が多かったのですが、今ではスターバックスやタリーズなど大手コーヒーチェーンの台頭により、飲用スタイルが“現代化”したと感じています。おしゃれな空間を提供したり、コーヒーを持ち運べるようにして、若い人たちの間でファンが増えていきました。

 お酒で言えば、ハイボールの事例が“現代化”に成功したと考えています。もともと2杯目または2軒目以降のお酒としてウイスキーは飲まれてきましたが、ハイボールは1杯目から楽しめるようにジョッキで提供したり、若い人においしいと感じてもらえるようにアルコール度数を低くしました。その結果、ウイスキーといえばバーでゆっくり飲む人が多かったのですが、ソーダで割って居酒屋で飲む人が増えていきました。

 こうした成功事例を受け、私たちは「生ビールの現代化」を目指していくことにしました。2010年秋から検討を開始して、2011年春にはプロジェクトチームを発足。チームは、技術開発部、パッケージング技術開発センター、調達部、営業部、マーケティング部からなる横断的なものでした。

 そして開発にあたっては3つのポイントを意識してきました。(1)独自の技術による新しいおいしさ(2)「被写」を意識した商品設計とサービス(3)人に伝えたくなる体験型マーケティング――の3つですね。

独自に開発した「凍結攪拌技術」により実現した「フローズン〈生〉」
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