コラム
» 2012年09月11日 08時00分 UPDATE

高級扇風機に学ぶ、汎用品に革新を生む仕組み (1/2)

世の中にありふれていて、革新の余地はなさそうに見える扇風機。そんなコモディティとも言える商品でも、よくよく観察すれば新たな価値は生み出せるようです。

[松尾順,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:松尾順(まつお・じゅん)

早稲田大学商学部卒業、旅行会社の営業(添乗員兼)に始まり、リサーチ会社、シンクタンク、広告会社、ネットベンチャー、システム開発会社などを経験。2001年、(有)シャープマインド設立。現在、「マインドリーディング」というコンセプトの元、マーケティングと心理学の融合に取り組んでいる。また、熊本大学大学院(修士課程)にて、「インストラクショナルデザイン」を研究中。


 コモディティ(ありふれた汎用品)でも、まだまだ革新の余地がいくらでもあることを実感させられるのが、バルミューダの高級扇風機「グリーンファン(GreenFan)」です。

ah_nau1.jpg グリーンファン

 2010年に初めて登場した「グリーンファン」は、3万円を超える価格でした。2011年に発売された小型化バージョン「グリーンファンミニ」も2万円台。それでも、「自然風」のような優しい風が評価され、飛ぶように売れました。現在も堅調に売れ続けています。

 バルミューダ社長、寺尾玄氏によれば、「高級扇風機」を開発することは、「理詰めの決断」だったそうです。

 具体的には「冷房器具は必需品である」「地球温暖化の影響で需要はますます高まるだろう」「省エネが叫ばれる時代、エアコンに代わるものとして扇風機の人気は高まるだろう」といったことが開発を決断した理由です。

 2011年は、震災後の福島原発事故により電力不足が懸念され、全国的に節電が推進されたことは、同社にとってはまさに「追い風」となったようです。

 さて、まるで自然風のような風が作れる「グリーンファン」に寺尾氏が取り組むきっかけは、取引先の工場に行った際、扇風機を工場の壁に向けて回していたのを見たことでした。

 その工場では、扇風機の風を直接当てるのではなく、壁に当てて一度バウンドさせて人に当たるようにしていたのです。なぜかと聞くと、「扇風機の風は気持ちよくないから」という答え。

 寺尾氏が研究してみると、従来の扇風機は、ファンで空気を切り取り、渦を巻く「旋回風」を前方に送り出す仕組みのため、肌に刺さるような硬さがあることがわかったのです。

 これは、風の「弾丸」を受け続けているようなものと言えるかもしれませんね。実際、従来の扇風機にずっと当たり続けていると、だんだんつらくなってくるものです。

 そこで、グリーンファンでは、ファンの形状を工夫し、風がふわっと広がって「面」で人に当たるような仕組みになっています。おかげで、自然のそよ風のような心地よさを感じることができるわけです。

 なお、グリーンファンには、風の心地よさに加えて、静音性、省電力性といったメリットもあったことが、高価格でも爆発的に売れた要因でしょう。

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