コラム
» 2012年08月02日 08時00分 UPDATE

相場英雄の時事日想:発表モノだけが仕事ではない! 独自ネタが消えた経済面 (1/3)

経済関連ニュースを見ていて、「どこもよく似た報道だなあ」と感じたことがある人も多いのでは。記者が独自の視点で記した記事は、なぜ減っているのだろうか。経済報道に横たわる業界の問題点を紹介する。

[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 過日テレビニュースを見ていたとき、ふと気付いたことがある。経済紙や経済週刊誌など専門的な取材に強みを持つメディアを除き、一般紙あるいはテレビの経済関連ニュースで独自ネタ、すなわち記者の嗅覚で探し出した問題点、あるいは各々の視点で記した記事が極端に減っているのだ。本稿では、経済報道に横たわる業界の病巣の一端を覗(のぞ)いてみる。

内覧取材が記者を取り込む

 冒頭で記したテレビニュースとは、以下のようなものだ。

 中国の北京で大手家電量販店が開店する、という内容。オープン前日にマスコミ各社が店に招かれ、この企業が中国市場で他の量販店と差別化するポイントについて報じていた。ポイントとは、「中国で日本式のきめ細やかなサービスで接客する」という事柄だ。

 私は中国市場の量販店事情に疎(うと)いが、専門の商品知識を有し、かつ顧客の側に立って熱心に説明し、販売するスタイルは中国市場では斬新な手法となり得るのだろう。この点で、いくつかの日系メディアが報じた「日本式のきめ細やかなサービス」という切り口は正解だ。

 だがこの事象を、企業側の視点で見てみよう。

 多数の記者を招き、事前に取材してもらって記事にしてもらえば、広告費をかけずに多くの人に店のPRが可能となる。なおかつ、横並び意識の強い日本系メディアに声がけすれば、1社だけ報じない「特オチ」を恐れるあまり、記事の濃淡の差こそあれ、内覧会は確実に読者や視聴者に届くニュース素材となる。

 私が問題視しているのは、こうした内覧会的な記事やニュース映像、換言すれば、企業が素材を提供するモノが多すぎはしないか、ということなのだ。

 例えば、都心の再開発が典型的だ。ターミナル駅の横に新しい商業施設がオープンしたとする。賢明な読者ならばもうお分かりだろう。先の北京の量販店での「内覧会」そのものが記事となってしまうのだ。

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