電通が命名した「鏡衆」、新たな消費者にどう訴えかけるか?(1/2 ページ)

» 2012年07月17日 08時00分 公開
[松尾順,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:松尾順(まつお・じゅん)

早稲田大学商学部卒業、旅行会社の営業(添乗員兼)に始まり、リサーチ会社、シンクタンク、広告会社、ネットベンチャー、システム開発会社などを経験。2001年、(有)シャープマインド設立。現在、「マインドリーディング」というコンセプトの元、マーケティングと心理学の融合に取り組んでいる。また、熊本大学大学院(修士課程)にて、「インストラクショナルデザイン」を研究中。


 電通消費者研究センターが2007年に実施した「電通・新大衆調査」の結果から浮かび上がってきた新たな消費者像は、「鏡衆(きょうしゅう)」と命名されていました。

 鏡衆とは「人からの影響をうまく受け取りながら」「鏡のようにレスポンス&発信していく共振力を持つ人々」であり、「共振型消費者」とも表現されていました。

 ここで「共振力」とは、「クチコミ発信力」とも言い換えることができます。すなわち、他者の情報に感心や感動、あるいは共感したら、その情報を鏡のように自らも再発信し、他者にも伝えようとする能力(意欲)が「共振力」です。

 同調査によれば、鏡衆=共振型消費者が全体に占める割合は43%と、半数近くに達するボリューム層になっていました。一方、「他者からの影響は受けないが、うまくレスポンス&発信することはしている」という人々は36%でした。彼らは、「私こだわり消費者」と表現されており、自分なりの選択眼で判断することを大切にしている人々です。

 この調査結果から分かるように、現代は「個性を生かす時代、自分らしさの時代」と言われながらも、実際には他者と共通点を探し、共有できる「モノ・コト」を楽しみたいという欲求の高まりがうかがえます。

 「鏡衆」という言葉は、2007年当時もそれほど注目されたわけではなく、現時点ではほとんど忘れ去られた言葉になっています。2007年当時はTwitterやFacebookの本格普及以前。共振力を発揮していたのは一握りのブロガーで、レビューサイトで積極的に自らの評価を投稿するやはり一握りのレビューワーに過ぎなかった。また、当時ソーシャルメディアの雄として絶好調だったmixiは、基本的にクローズドな仕組みであったため、拡散力に欠けていました。

 つまり、「鏡衆」という概念そのものに対しては納得できても、その具体的な影響力を実感することは、当時はまだ困難だったと思われます。

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