『おおかみこどもの雨と雪』の次に注目されるのが『NARUTO』である。毎年夏公開の定番作品ではあるが、今回は事情が違っている。それは、今回の『劇場版NARUTO-ナルト- ロード・トゥ・ニンジャ』がアニメ化10周年記念作品であり、原作者自らが原作、企画、ストーリー、キャラクターデザインを務めるからだ。
これを聞いて思い出すのが『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』(2009年)。原作者がストーリーを書き下ろしたばかりではなく製作総指揮も兼ねるという力の入ったこの作品は、前作を4倍以上も上回る48億円という興行収入を叩き出した。この前例を見るならば、今回の『NARUTO』も当然興業サイドから同じような期待がかかるはずである。
次図を見れば分かるが、劇場版としては『ONE PIECE』が先にスタートしたものの、ここ数年の興行収入はともに10億円前後とさほど変わらなかった。その中で『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』の存在感は圧倒的で、原作者の威光が改めて大きいことが分かるだろう。
すでに情報が公開されているが、『ONE PIECE』サイドは今冬に原作者書き下ろし、さらに総合プロデューサーを務める『ONE PIECE FILM Z』を公開する予定である。半年の差はあるが、周囲から見ると「『NARUTO』VS.『ONE PIECE』」の戦いに見える。双方ともに『週刊少年ジャンプ』で連載している事情もあり、内部でも恐らく大変なライバル心を燃やしていることだろう。
7月7日から公開されている宮沢賢治原作の『グスコーブドリの伝説』は前回の記事にも登場した今年72歳になるアニメ業界の重鎮、杉井ギサブロー監督作品である。
この映画は完成・公開まで制作会社の清算など紆余曲折があり5年越しの作品となったが、そんな状況下でも杉井監督の執念が途絶えなかったこともあり、内容的には杉井監督の代表作品である『あらしのよるに』(2005年)に並ぶ出来映えとなった。ファミリーで見に行くには最適の映画だ。今回は配給元(ワーナーブラザーズ)が違うので何とも言えないが、『あらしのよるに』(東宝配給、興収18億8000万円)を超えるのは難しいにしても、10億円の大台には届いてほしい作品である。
もし『グスコーブドリの伝説』を見て面白いと思ったら、7月28日からドキュメンタリー映画『アニメ師・杉井ギサブロー』が公開されるので、そちらもぜひ見てほしい。
年間を通じて一番動員力のある夏シーズンには幅広い層を引き寄せるキッズ・ファミリー映画が集中するが、そんな中で注目されるのがアニメファン向け作品『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's』である。
前作『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』(2010年)は1月23日という興行的に見ると「冬」の公開時期であったにもかかわらず、19館スタートで3億8000万円という興行収入を残している。この種のファン向け劇場作品は興業的に見ると、上映館数は少ないものの1館当たりの観客動員は多いという特徴がある。
従って、本作は夏興業ということもあり観客アベレージ、興行収入ともに前回を上回る数字が期待されている。配給会社がアニプレックスというのも注目材料。作品のタイプは違えど、8月4日公開の『コードギアス 亡国のアキト』も同様の興業パターンである。
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